ニッケイ新聞 2012年7月31日付け
南米南部共同市場(メルコスル)加盟国外相らがブラジリアで30日に会合を持ち、31日の臨時首脳会議でベネズエラの加入式が行われると30日付エスタード紙などが報じた。フェルナンド・ルゴ大統領の弾劾裁判後のパラグアイが資格停止となった間隙を狙ったともいえる形でのベネズエラ加入には、加盟国同士の政治的意図も見え隠れしている。
1991年にパラグアイのアスンシオンでアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジルの4カ国が調印、1995年1月正式発足のメルコスルは、域内の関税撤廃と域外共通関税の実施を目的とした同盟だ。
ベネズエラの加盟で、南米総人口の約7割、国内総生産は75%を占める経済域となるメルコスルは、アンデス共同市場(アンデス共同体のボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー、チリを準加盟国としており、都合10カ国が加盟する自由貿易圏ともなる。
ベネズエラの加盟は2006年7月の臨時首脳会議で議定書に調印済みで、各国議会で承認を得た後に正式加盟の運びとなっていたが、唯一議会未承認だったパラグアイが参加資格停止となった事で加入が実現した。
パラグアイが来年4月の大統領選後に復帰するのを待たずに加入式を行うのは、復帰後に自分達を無視してベネズエラ加入を決めたと不満を表明しても逆戻り出来ない事を明白にする行為だ。
ベネズエラの加入は、ブラジルとアルゼンチンには自国製品を売り込める市場の拡大を意味する。ベネズエラにとっては、左派のルゴ前大統領退任後は承認がますます困難になると考えられていたパラグアイの参加資格停止で妨げの石がなくなっての正式加入で、チャベス大統領は目前の大統領選にも弾みがつく。
パラグアイの参加資格停止はルゴ前大統領の弾劾裁判は民主主義の原則から外れたと判断したためで、南米諸国連合(ウナスル)も同調したが、米州機構(OAS)調査団は民主主義の原則を踏み外していないと判断、同国への懲罰を避けたという経緯がある。
エスタード紙はこの件について、6月15日に起きたパラグアイでの土地なし農民と警官隊の衝突、死傷事件後、ルゴ大統領への信任は急速に薄れ、議会内の支持派も遠のいた事などをまとめたブラジル情報局(Abin)の報告書がジウマ大統領の手に渡ってなかった事を指摘。Abinや外務省の文書が大統領に渡される前に重要文書から外される事は珍しくなかったらしく、文書の仕分け担当者が、6月の弾劾裁判は24回目だが、今回も実際の裁判にはならないと判断して情報を止めた可能性がある。
ベネズエラのメルコスル加盟も、パトリオッタ外相はパラグアイ不在の間は待ってくれと交渉していたが、ジウマ、クリスチーナの伯亜大統領が加入の好機と判断したとの記事をエスタード紙が掲載した事もあった。