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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年7月31日付け

 オバマ大統領が「同性婚を容認」と発言したことから巷の弥次さん喜多さんは酒盃を傾けながら口角泡を飛ばしての大議論である。ご両人はちょっとおっちょこちょいながら頑固な保守派であり、嫁さんは女の子に限り婿どのは男が世の決まり事。それが—「女と女」「男と男」が結びついてのご祝儀なんぞは闇夜に飛び交う鵺の世と、夜を徹してオバマ批判を繰り広げる▼お怒りはごもっともながら、この「ホモ」と「レズ」は、人類の歴史が始まったときに始まるらしく、こればかりは「好き好き」なのかもしれません。あの古代ギリシャとローマでも盛んだったし、暴虐非道な暴君ネロも筋骨逞しい男や女装しての乙女?となったし、その上—母のアグリピナと近親相姦にもと真に以って忙しい。古い記録としてはエジプトの同性愛があるし、5千年の歴史を誇る中華の大国も負けてはいない▼明から清の時代にかけて福建省の南部では隆盛を極めた。「福建人はひどく男色を重んじ、貴賎、美醜を問わず—年の上の方が契兄、若い方が契弟になる」と、家族ぐるみで応援したそうだ。いや、このような「好き者」はアフリカにもいたし、我が日本列島にも織田信長と森蘭丸、近時には民俗学者の折口信夫が教え子を養子縁組したのが有名だ▼いや、この不可思議な衆道は江戸になっても風狂な徒花を咲かせたのは、破礼句の「末摘花」などに尽くせぬほどに満載されている。江戸は芳町の「陰間茶屋」を詠み古川柳は大いなる笑いを誘うが、この奇妙なお遊びを笑い飛ばす江戸っ子の粋がいい。まあ、当方は弥次喜多派ですが—。(遯)