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試めされるブラジルの燃料計画=輸入は5カ月で14億レ=エタノール王国も輸入国に=インフレ圧力の1つにも

ニッケイ新聞 2012年8月1日付け

 ブラジルのエタノール(アルコール)生産量が減る一方、燃料の需要が増えて1〜5月のガソリン輸入量が昨年同期の4倍に拡大と7月30日付エスタード紙が報じた。燃料輸出国のブラジルが輸入国になり、燃料計画の見直しが必要となる中、31日付同紙は、米国の干ばつなども追い風となりインフレ高進と報じた。

 岩塩層下の油田発見などが華々しく報じられ、OPEC(石油輸出国機構)の仲間入りかと騒がれたブラジルが、急速に燃料輸入を増やしており、燃料価格の調整などを余儀なくされている。
 燃料輸入急増は、2008年のリーマンショック以降、エタノールの生産が減った事も一因だ。国際的な金融危機とエタノールの生産は一見無関係だが、景気後退による負債増はアルコール産業でも起き、工場の閉鎖や規模の縮小、サトウキビ畑の刷新を含む投資が滞る例が続出している。気候変動などで世界的にサトウキビ生産量が減り、エタノールより砂糖という傾向が生じた事もエタノールの生産減少に拍車をかけた。
 具体的には、2011/12農年のバイオ燃料の生産は17%減少。減産となった50億リットルの一部は輸入で埋められ、その量は14億5千万リットルに達した。
 この数字は、世界でも唯一、エタノールの自給と輸出が可能な国と目され、原油とエタノールの輸出国である事を誇っていたブラジルの実態が変化した事を如実に示す。
 しかも、岩塩層下の原油採掘や精製所の建設の遅れと、1〜6月だけで160万台の新車増など、燃料需給のバランスが崩れる情況は拡大中。エタノールの減産でガソリンの消費に拍車がかかり、昨年のガソリン消費は前年比19%増で、今年の消費も11%増えている。これに対し、エタノールの消費は昨年が28%、今年も既に14%減っている。
 一方、1〜5月のガソリン輸入量は315%増え、燃料輸入に費やした額は、輸入が前年比332%増えた昨年の年間輸入額の83%に相当する14億ドルに達した。これは、国内のガソリン生産量が伸びておらず、国外への依存度が高くなっている事を物語る。
 その他の燃料消費も、ブラジル貿易の救世主である農業の活性化や建設ブームに空の旅増加などで、ディーゼルが昨年同期比37%、航空機用ケロシンが17・5%増加。ペトロブラスは原油増産のための投資を増やすが、増産しても精製施設が不足すれば元の木阿弥で、精製所建設の遅れを取り戻すと共に、燃料計画を見直し、バイオ燃料と化石燃料の位置づけを明確にする事が急務だ。
 国際的な原油価格高騰で、石油製品や天然ガスなどの燃料価格上昇が懸念されるが、燃料の卸売価格上昇と、米国の干ばつによる穀類の値上がりを含む食料価格の上昇で、6月の総合市場物価指数(IG—M)は、5月の2倍超の1・34%上昇したという。