ニッケイ新聞 2012年8月3日付け
ブラジル史上最大の汚職事件とされるメンサロン事件の裁判が2日に始まったと同日付ブラジルメディアが報じた。ルーラ政権の閣僚や連立与党幹部、国会議員らも絡んだ事件の裁判は14時開廷。最高裁判所では、軍警300人にその他の警備員40人を配置、三権広場に柵を設け、最高裁前のバス停は使用を禁じ、建物内の人の流れも制限するなど、物々しい雰囲気の中で裁判が始められた。
「最高裁は正義をなすと信じている。検察側が言う正義とは全員が有罪となる事だ」—。歴史的裁判開始を翌日に控えた1日、検察庁特捜局のロベルト・グルジェル長官がこう語った。告発から7年を経てた裁判の被告は38人、600人の証人の供述や検察が調べた事柄をまとめた書類は5万ページに及ぶ。
検察は38人を贈収賄や公金横領、資金洗浄など七つの罪状で起訴しており、ルーラ政権を揺るがした大型汚職事件は、ジョアキン・バルボーザ判事によるあらすじ説明後、グルジェル特捜局長官の冒頭陳述に進む。
同長官は5時間を与えられ、労働者党(PT)のジョゼ・ジルセウ元官房長官やジョゼ・ジェノイノ元党首、デルビオ・ソアレス元会計らの政界関係者、マルコス・ヴァレリオ被告らの企業家グループ、カチア・ラベロ農業銀行社主らの金融関係者の3者が、不正な形で金を動かし、国会の票の取りまとめなども行っていたと告発する。
3日以降はジョゼ・ジルセウ被告の弁護人を皮切りに、反証のための冒頭陳述を開始。早ければ14日、遅くとも15日から判決に入る予定だ。
今回の裁判は、政治的な駆け引きが裁判の行方に影響を及ぼす可能性が取り沙汰され、審理開始後に、PTの顧問弁護士などを務めた経験もあるジョゼ・アントニオ・ディアス・トフォリ最高裁判事の審理参加の可否を問う声が出てくる可能性も高い。
また、この裁判でブラジルの汚職体質が問い直され、何かが変わると期待する声が高い一方、約30年間ジャーナリストとして働き、パウロ・マルフ元サンパウロ市市長の公金横領問題について問い続けてきても何も変わっておらず、今回の裁判にも期待は出来ないと漏らす人物もいる。
フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾ元大統領は、ブラジルが法治国家であるか否かが最高裁の裁判で明白になると発言しているが、PTを始めとする連立与党の政治家や企業家らがどのような立場と判断され、どのような判決を受けるかは、ブラジルの政界浄化の程度と司法の信憑性(しんぴょうせい)や中立性などのテストともなる。それだけに、ブラジルの将来にとっても大切な裁判だ。
サンパウロ市サンパウロ美術館(MASP)地階スペースでは1日夜、汚職反対を唱える人々が集まり、ローソクの灯でMENSALAOの文字を描き出して抗議行動を行った。