ニッケイ新聞 2012年8月8日付け
パラグァイ在住の坂本邦雄さんの寄稿文は、背景となる南米史までを解説してくれるのでとても勉強になる。今週掲載される一文も秀逸だ。パラグァイがメルコスルから資格一時停止されたことを「三国戦争の再現か」と表現しているのを読んだときは、目からウロコの気持ちだった。同文詳細は9日付け6面で▼ルーゴ大統領の罷免裁判はたった一日で終わってしまったので、「十分な弁護の時間がなかった」ことが、メルコスル諸国から「民主的でない」とされ〃クーデター〃扱いされている▼思えばアルゼンチンでは先ごろ、クラリン紙などの鋭い批判に耐えかねた大統領が新聞紙配給制限法を通して、マスコミの生殺与奪の権利を握ろうとした。亜国公式インフレ率は15%だが、実質は25%だとブラジルマスコミは書く。でも地元紙は書けない。そんな状態が民主的なのか▼ベネズエラでは先般、政府批判をするテレビ局が封鎖されたりした。あれは言論弾圧ではなかったか。それをメルコスルに加盟させ、民意に基き憲法に則って罷免裁判を行ったパラグァイを「民主的でない」とするのは、確かに不可思議な対応かもしれない▼現在話題をさらっているメンサロン裁判は、与党の元大臣クラスの汚職をも裁くものだ。独裁国家では起きえない。結果はどうあれ、それが起きただけで、ブラジルがどれほど民主的かを示す▼メンサロン、ロンドン五輪で一番得をしているのは誰か—と考えた。この二つのおかげで影が薄くなったのはカショエイラ容疑者だ。上下両院究明委員会でここぞとばかりに注目を浴びていたが、ここ2週間ほどすっかり忘れられた?!(深)