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連邦大学の社会枠義務化か=定員の半分公立高生に=大統領裁可待ち今年から=大学の自治権侵害の声も

ニッケイ新聞 2012年8月10日付け

 上院が7日、全国の連邦大学の定員の50%を公立高校卒業生向けの社会枠に割当てるという法案を承認したと8日付伯字紙が報じた。大統領が承認案通り裁可すれば、4年以内に全ての連邦大学に適用される同法案を巡り、関係者の間で物議を醸し出している。

 ブラジルの大学では2004年から社会枠採用が認められており、今年4月には最高裁で人種による社会枠は合憲との判決も出たが、今回承認された法案は、すべての連邦大学や(大学レベルの)専門学校に定員の半分の社会枠採用を義務化。大学の自治権侵害などの声が飛び交っている。
 現在の大学入試では、黒人や先住民などの人種に基づく枠と、収入や公立高校出身か否かに基づく枠を、単独または統合して適用する事が出来、社会枠の採用は大学毎に選択できる。
 例えば、ブラジリア連邦大学は定員の20%を黒人、7学部では11人分を先住民向けとし、リオ連邦大学は定員の30%が一人当たりの家族収入が1最低賃金以下の公立校出身者向けだ。南大河州連邦大学は定員の30%を公立校出身者が埋めるが、その半分は公立校出身の黒人学生に割当てている。現在は59の連邦大学中32校が社会枠を採用、12校が特定の条件の受験生にボーナス点を加算している。社会枠を採用していないのは14校のみだ。
 一方、新しい法案は、全連邦大学の定員の半分は高校の全課程を公立校で修了した学生用とし、その半分(25%)を一人当たりの家族収入が1・5最低賃金(現行で933レ)以下の学生、残りを黒人や黒人系の混血(パルド)と先住民に割当て、人種枠で埋まらない分は公立校出身者で充当する。
 例えば、定員が100人なら、50人分は公立校出身者用で、内25人分が一人当たりの家族収入が1・5最賃以下の学生、25人分がそれ以上の収入の黒人、パルド、先住民に割当てられ、人種枠分が満たない時は公立校出身者で不足分を満たす。黒人やパルドで見た州毎の人口比率は、バイア76・4%、サンパウロ州34・5%、サンタカタリーナ15・4%のように差があり、人種枠の数は州毎に決める。私立校出身者が競えるのは、残る50%の枠のみだ。
 同法案は10年間有効で4年以内に全面移行とされ、裁可後の実施となる今年末や来年初頭の入試から適用されるが、社会枠を採用しているまたは賛同している連邦大学でも、定員の半分という枠の大きさやすべての大学で適用という規定は、地域の特性や大学の自治権を無視したもので、教育レベルの低下も懸念されるとの声が出ている。
 また、定員の半分しか割当てがない私立校関係者からは、私立校生への門がますます狭くなる、社会枠の導入より公立校の教育レベル引き上げが優先されるべきなどの不満の声が出ている。