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柔道=ロンドン五輪で大健闘=ミュンヘン銅メダル 石井さんに評価聞く=〃愛弟子〃の活躍に大満足=「リオ五輪は集大成に」

ニッケイ新聞 2012年8月18日付け

 金1に銅3個——12日に閉幕したロンドン五輪において、ブラジルが獲得したメダル総数(17個)の実に4分の1を柔道が占めた。もちろんコンデ・コマ(前田光世)や三浦鑿の時代から日本移民がブラジル人に伝えてきた競技であり、日本文化をスポーツという形で普及し、それがブラジル国家に貢献している最たるものだ。柔道は過去総計18も五輪メダルをとり、ブラジル全体の108個中の2割を占め、最多メダル獲得種目になっている。主催国となる4年後のリオ五輪では、文句なしに国民が一番成果を期待する競技に育った。72年のミュンヘン五輪でブラジル柔道界に初のメダル(銅)をもたらした石井千秋さん(70、栃木)から今回の評価を聞いた。

 「メダル四つは大したもの。大満足で言うことなし」。柔道における一大会最多メダルを記録した今五輪を、石井さんはこう一言で振り返った。
 石井さんは、メダル獲得者の48キロ級のサラ・メネゼス、60キロ級のフェリペ・キタダイ(10年パウリスタ・スポーツ賞受賞)、78キロ級のマイラ・アギアル、100キロ超級のラファエル・シウバら4選手を〃愛弟子〃と呼ぶ。
 というのも、ブラジル柔道界は長年、ブラジル人連盟幹部と全伯講道館柔道有段者会(関根隆範会長)らががっぷりと四つに組んで強化合宿を日本で重ねてきた歴史がある。この4人も、石井さんの母校・早稲田大学や国際武道大学を舞台に実施され、自身も指導をした「サンパウロ州選抜日本遠征」への参加経験者だからだ。
 同様にサンパウロ州出身者の多くは、日本政府の「草の根文化無償資金」を受けて完成した「柔道オリンピック・アレーナ(イビラプエラ公園内の専用道場)」通称〃南米の講道館〃で練習してきた。
 なかでも、紅一点にして唯一金メダルを獲得したサラ選手は、石井さんの妻・恵子さんが「合宿や試合の後、うちに泊まったことは数えきれません。娘のような存在です」と話すほど親密な仲だという。
 日系選手としては、84年のロス五輪のルイス・オンムラ氏以来、28年ぶりのメダル獲得となったキタダイ選手について尋ねると、「直前の世界ランクは19位だったから、嬉しい予想外。彼は柔道一家出身で、ジュニア時代から世界大会5位に入賞するなどの活躍を見せていた、いわゆる〃サラブレッド〃。いつかやってくれるとは思っていたが、こんなに早く結果を出すとは」と笑顔で話した。
 他の選手についても「ブラジル代表の選手らはみな真面目で、練習にも一生懸命に取り組む。ライバル選手の研究も、試合映像を何度も何度も見直すなど本当に熱心」と評し、才能だけでなく、たゆまない努力の賜物であることを強調した。
 日本移民が柔道を持ち込んで普及し、五輪や世界選手権大会でメダルの稼ぎ頭となり、今では「国を代表するスポーツ」の一つに成長した。「4年後のリオ五輪は、ブラジル柔道の一つの集大成となるはず」。そう語る石井さんの目には、強い期待の色が浮かんでいた。
 ミュンヘン五輪時の柔道代表監督だった岡野脩平・同有段者会元会長は数年前から「ブラジル柔道史」を調査執筆中であり、今回さらに輝かしい頁が加わったようだ。