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サンパウロ州軍警の臨時採用を禁ず=州条例と勤務実態に差=外勤警官はかえって減少=退職警官に再雇用の道?

ニッケイ新聞 2012年8月28日付け

 サンパウロ州の司法当局が、州政府に軍警の臨時採用を禁じ、現在の臨時採用者5526人を本採用とするよう命じたと27日付フォーリャ紙が報じた。

 サンパウロ州で軍警の臨時採用が始まったのは2002年。その当時、アウキミン知事は、内勤者を外勤に回すための処置と説明したが、司法当局が臨時採用を禁じた事で、約2万人といわれる元軍警からも、再雇用を求める声が高まりそうだ。
 臨時採用の軍警の任期は、原則1年。必要ならもう1年契約延長が可能だが、02年制定の州条例によると、臨時採用者の任務は、警察署などでの事務と保健衛生、防災関係の業務。公道での勤務と銃火器の携行・使用は禁じられている。
 ところが、内勤警官を外勤に回し、州内の治安強化のための巡回者を増やすためとの当時のアウキミン知事の言葉とは裏腹に、州会計監査院(TCE)のデータで見た外勤警官は、2008年の6万347人が2011年には5万7630人に減少。内勤警官は、2万542人が2万3301人に増えている。
 公道での勤務が禁じられているはずの臨時採用者が市内を巡回したり、銃火器の使用が禁じられているのに、銃を持って軍警基地(クアルテル)や警察署の警備に当たるなどの矛盾も指摘された他、学校周辺の警備などに臨時採用者が配置された例もある。
 軍警少佐でもあるオリンピオ・ゴメス州議や元軍警の再雇用のために奔走しているマラ・セシリア・M・ドス・サントス弁護士によると、「臨時採用の警官は保険すらかけられておらず、撃たれたりした時も何の保障もない」上、休暇や13カ月給もない。
 サンパウロ市では今年、レストランの根こそぎ強盗(アラストン)が頻発し、保安局と業者も交えた話し合いで、恋人の日や父の日のような祝祭日の前後の巡回を強化するなどの合意が成立したが、この時も02年同様、内勤者を外勤に回して巡回強化などの約束がなされた。
 南マット・グロッソ州の軍警総数(5532人)に匹敵、環境警察や州道警察、突撃部隊(各約3千人)を超える数の警官の本採用は治安強化に繋がると期待する声も高いが、州政府は臨時採用者の本採用と臨時採用禁止という判決を不服として上告。他方、軍警の臨時採用のための州条例は違憲との判断は2009年にも出ており、今回の判決を覆すのは難しそうだ。州検察局労務担当者は、臨時採用者の利用は州政府の人件費削減対策の一つとみている。
 治安強化策は巡回の強化だけではない事はもちろんで、防犯カメラの増設や迅速な通信手段導入なども有効。2014年のサッカーW杯(ワールドカップ)なども間近となった今、警察と庶民の間の距離を縮め、市民も参加できる方法を考えるなど、統合的な治安対策の立案と実行も必要だ。