ニッケイ新聞 2012年8月28日付け
ハリウッドの「西部劇」はとても面白く、少々の憂さはすっ飛んでしまうほどに痛快でよく映画館に通ったものである。あの映画のスクリーンには決まってインディアンが悪であり、カウボーイハットの白人は颯爽とした英雄に描かれ抜く手も見せぬ早打ちで大活躍する。だが—あれは中南米のインディオ虐殺のアメリカ版であり、今にして思えば厳しく反省する必要がある▼メキシコやグァテマラなどのアステカやマヤ民族と文明に壊滅的な打撃を与えたのはスペインであり、この頃の惨劇については神父ラス・カサスの「インディアス破壊小史」(1552年)などに詳しい。カリブ海の島では絶滅した先住民もいるし、征服前のアステカ王国では1100万人(2500万人の説もある)もいたが、1600年になると100万人に減少している▼インカ帝国征服者のピサロは、僅か300人の兵士で2万人のインカ兵を破り、皇帝アタウアルパを捕らえ処刑している。これらは、インディオ征服に共通するものであり、弓と槍を武器に闘う先住民らに銃で応戦するのだから、勝利の旗は白人の陣地に高々と翻る。ここブラジルでもグアラニー戦争という哀しい歴史もあるが、その昔 500万人とされるインディオも90万人近くが暮らしている▼国勢調査で判明したのだが、北伯を中心にこれだけのインディオが健在なのは、ちょっと驚きもする。これもいろんな保護政策があってのことだろうが、狩猟などを軸とした自然との共生を楽しみながらの日々は難しいにしても、もっと自由で闊達な暮らしが実現できれば、とても素晴らしいのだがー。(遯)