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麻州奥地で不法伐採=水源地周辺も広域開発?=パンタナルの植生に危機

ニッケイ新聞 2012年9月5日付け

 マット・グロッソ州に広がり、生態系の豊かさで知られる大湿原のパンタナルが、パラグアイ川水源地付近の不法伐採により存続の危機にさらされていると2日付エスタード紙が報じた。
 森林法の改定が騒がれても水源地の森林伐採が禁じられる点は変わらないが、エスタード紙が掲載したアウト・パラグアイ市付近の写真には、見渡す限りの畑や豚舎が広がり、もともとの植生が85%残っているはずのパンタナルとは思えない光景が広がっている。
 アウト・パラグアイ市はパラグアイ川の水源地に近い町で、1984年に写した水源地周辺の航空写真では、農牧業用地はパラグアイジーニョ川とセッテ・ラゴアス川の間に限られていた。
 ところが、2011年の航空写真では、農牧業を行っている場所が、水源付近を中心に飛躍的に拡大。大豆の栽培や牧畜業のための開発が急速に進み、環境保護や水源保護が二の次、三の次にされている様子がありありと伺われる。
 この様子を案じて連邦検察庁に訴えたのは、非政府団体(NGO)のパンタナル生え抜きの人間研究所(IHP)。同研究所は水源地周辺の航空写真を撮り、不法伐採の実態を突き止めた。
 パラグアイ川は、マット・グロッソ州を水源とし、南マット・グロッソ州、パラグアイ、アルゼンチンへと続く川で、クイアバ川やセポツバ川と共にパンタナルの湿原を潤す貴重な水資源だ。
 ところが、鉱物資源の採掘と農牧用地の開発によって破壊された地域は環境への影響を考えて永久保護地区とされているはずの水源地周辺にも広がっており、パラグアイ川水源では4千ヘクタールの土地の内、90%が大豆畑になっている。
 同研究所は、パラグアイ川とクイアバ川、セポツバ川の三つの水源地を含む5万ヘクタールの土地での不法伐採や不法開発を早急に止めさせないと、パンタナルの大湿原を潤す水資源が枯渇し、動植物の生態系も危機にさらされるという。
 パラグアイ川周辺の開発は、農牧業のための用地拡大が主因だが、行政側の監査体制が整っていないため、やりたい放題になっている。パンタナルの水質や乱開発の実態は誰も捉えていないに等しく、同研究所が8月半ばまでかけて撮った航空写真は貴重な資料だ。
 水源地の破壊は人間の生活そのものも脅かすものだが、従来の森林法では半径30メートルまでとされていた水源地周辺の森林伐採禁止区域が、半径5メートルのみに制限されれば、人間の飲み水も農牧地を潤す水も枯渇する日が近くなる。