ニッケイ新聞 2012年9月5日付け
南伯を中心に多数の死者を出したことから、保健省の予防局長がHINI亜型のインフルエンザの対策が甘かったと認める発言を行った。4日付伯字紙が報じている。
「HINI亜型に対してなんという治療薬(オセルタミヴィル)が効くかもわかっているのに、私たちはまだ『では、誰かワクチンを打つのか』『子供にうつべきなのか』などという議論をしている段階だ」と、保健省予防局のジャルバス・バルボーザ局長は嘆いている。
HINI亜型は2009年4月に米国とメキシコで発症して以来、2週間のうちに世界に拡散したインフルエンザで、豚が病原菌のひとつとされている。現在でも1年につき世界で18万4千人もの死者を出している油断できない病気だ。ブラジルでも発症例が多く、2012年は8月20日までの時点で2398件で発症が確認され、うち307人が死亡している。
バルボーザ局長は、ブラジルの対策をチリの対策と比べ「悠長で甘いものだ」と批判した。チリではオセルタミヴィルの全国的普及を行った結果、人口100人中0・8人まで同病の死亡率を下げることに成功した。それに対しブラジルは100人中3・2人と4倍の数字となっている。
また、ブラジルにおいてH1N1亜型は南伯において多発している。今年の死亡者307人のうち、パラナー州40人、サンタカタリーナ州74人、南大河州63人と、全体の6割近くを占める177人が死亡している。
バルボーザ局長はこの傾向を「南伯の古くからの習慣によるもので、適切な薬にたどり着くのが後回しになってしまうからだ」と語っている。南伯では風邪などをひいた際に、お茶や薬草で治療を試みる傾向が強く、病状が悪化するまで病院での診察を受けたがらないという。
保健相は、咳が続いたり38度の熱を発症した場合、直ちに病院に行きHINI亜型のウイルスに感染していないかを確認することを薦めている。