ニッケイ新聞 2012年9月7日付け
【既報関連】1998年からほぼ毎年開催されている東京農業大学(東京都世田谷区)の汎米校友大会が、今年から汎米諸国に限らず世界に広げようと「東京農業大学海外校友大会」と名称を変えて世界規模で開催されることになり、その第一回が28日から31日までサンパウロで開かれた。歓迎夕食会が28日夜、ニッケイパラセホテルで開かれ、来伯した大澤貫寿・同大学長兼理事長は「昨今は学生同士の絆が作りにくいが、同じ農大の柱に組み込む必要がある」と若者を取り込む必要性を強調し、「海外で活躍する校友の存在なしに、今の農大はない。つながりをゆるぎないものにしたい」と期待をあらわにした。
大会には日本から約30人、アルゼンチン、パラグアイ、カナダ、米国からも数人ずつの参加を得て100人以上の卒業生が集い、農大から三好吉清・校友会長、大澤学長理事長、豊原秀和副学長をはじめ、教員や現役の学生も駆けつけた。
挨拶した三好会長によれば、同大校友会は日本国内の全都道府県に支部があり、会員は15万2千人を超えるという。また「海外には13支部、1600人以上の会員がいる」と説明、国内外に広がるネットワークを誇る。
南米では98年、ブエノスアイレスで「東京農業大学ラテンアメリカシンポジウム」として開かれ、翌年から「パンアメリカ校友大会」としてサンパウロ、パラグアイ、メキシコ、米国、カナダと、持ち回りで開催されてきた。
近年は各国で後続移住者が途絶えたため高齢者が活動の中心となり、運営の困難さが指摘されていたが、一昨年9月に開かれた第10回アルゼンチン大会の代表者会議では継続を望む声が多く、今大会の実施に至った。
ブラジル農大会の沖眞一会長はあいさつで「14年にわたり継続してきた海外校友大会を、後に続く若い世代、若き群像に託したい。世界のどこかで今後も継承されていくことを願う」と期待した。
各国の参加者がそれぞれ紹介された後、一同乾杯し、和やかな雰囲気で夕食へと移った。会場には懐かしい再会や歓談の輪があちらこちらで広がった。
各テーブルを回りながら、出席者に笑顔で話しかけていた三好校友会会長(73、神奈川)は、「学生は昨今個人主義的で、バラバラになりがち。会員にも後輩が少なくなり、これから心のつながりをどう保つかを考えるべき」と今後への懸念を示した。
日本から拓殖学科(現国際農業開発学科)を1966年に卒業した同期生4人で参加した一人、清水紀彦さん(68、群馬)は、来伯は2度目。「卒業生は農業だけでなく、様々な分野で活躍している。特に海外の校友は団結力がある」と感心した様子で話した。
なお、29日以降は大澤学長、山中イジドーロ氏の講演、サンパウロ大学表敬訪問、ピラール・ド・スールの農園見学などが行われた。