ニッケイ新聞 2012年9月22日付け
「政治目的に宗教を利用している」—。現在サンパウロ市長選で首位を独走しているセルソ・ルッソマノ候補が所属するPRB(ブラジル共和党)を、サンパウロ大司教区のドン・オディーロ・シェレー大司教(カトリック=旧教)が厳しく批判するコメントを先週出したことで、福音派ウニベルサル教会(新教)と〃聖戦〃が勃発したと伯字紙は書きたてた。そこに端を発した新旧キリスト教会間の一連の軋轢に続き、同候補は20日、大司教の呼びかけで行われた市長候補者の討論会に欠席し、大司教のみならず他候補からも批判の的となったと21日付フォーリャ、エスタード両紙が報じた。
討論会で大司教は、ルッソマノ氏の不在を「〃深く〃遺憾に思う」とし、最初の演説で「選挙戦での宗教の利用は、社会に対して癒しがたい傷を残す」とのべた。
大司教は先週公表した文書で、「ルッソマノ氏の選挙運動リーダーの何人かがウニベルサル教会の牧師だ」と指摘していたが、その日の演説ではルッソマノ氏の名前も同新教宗派の名前も引用せず、「選挙運動に宗教の組織を用いることは認めない」と批判した。
ルッソマノ氏が欠席した討論会には、他の候補者たちが勢ぞろいした。カトリック教会のカリスマ的一派と関係しているとみられるガブリエル・シャリタ候補(PMDB)は、「PRBから候補者が出ていることが危険。何のプロジェクトもなければ、おかしなところから支援を受けている」と明確に批判した。
討論会後、メディアの取材に対しフェルナンド・ハダジ候補(PT)は、「ルッソマノ氏の不在は教会との軋轢に拍車をかける。彼と同じ宗教の人間が引き起こした攻撃に対し、真摯な態度を見せる唯一の機会だった」、ジョゼ・セーラ候補(PSDB)は「(ルッソマノ氏の欠席は)事前に予想できたこと。彼は思想を闘わせる討論会には出ない」、ソニーニャ候補(PPS)は「(ルッソマノ氏は)既に何度も討論会に欠席している。今回は明確に敵意をむき出しにしたようなもの」とそれぞれ大司教らの批判に同調する発言をした。
この討論会は候補者らに対し、大司教はじめカトリックの神父や修道女が教育や福祉に関する政策について質問するために開かれたが、中絶や同性愛などの話題は討論には上げられなかった。
なお、ルッソマノ氏は20日、グローボ系列のSPTVの取材中、「当選した場合にウニベルサルが市政に影響をもつ可能性はあるか」との質問に対し、明らかに苛立った様子を見せたという。
「なぜ宗教の話が出てくるのかわからない。サンパウロの話をやめるのか、宗教について議論するのをやめるか、どうする?」と声を荒げ、その日の午後に市東部を回っていたときも報道陣に対し、宗教に関して質問しないよう釘をさしたという。