ニッケイ新聞 2012年9月26日付け
来月7日に迫るサンパウロ市議選に、はたしてどう影響したか—。30数人に及ぶ東洋系の名を持つ候補者から、文協の役員からなる実行委員会が選んだ〃精鋭〃8人を集めた公聴会が15日午前、文協小講堂で行われ、約100人が各候補者の発表に耳を傾けた。現職の野村アウレリオ(PSDB)、5期目の当選を目指す神谷牛太郎(PSD)両市議をはじめとする数人以外はほぼ無名。資金力、すなわち宣伝力などが明暗を分ける部分も大きい選挙戦を戦う上で、自らのプロジェクトや考えをアピールすることでコロニアでの認知度を上げる点で有意義なイベントとなり、選挙のあり方に一石を投じる機会ともなったようだ。
「政治家は選挙キャンペーンにお金を使いすぎ。派手派手しく市民の前に出るのではなく、影で働くのが本来の姿。少数派の人々の代表であるべきでは」—。他の候補を見渡しながらそう言い放ったのは、初出馬の村本ジウザ候補(56、PSD)だ。
「20年ずっと当選し続けていても、何もしない人もいる。そういう市議会を変え、当選したらコロニアのために働きたい」と語気を強める。
南大河州イタポラン出身の二世で、コンサルティング会社を経営する。「自分は政治家の二世でも何でもない一般人。少なくともそういう自分の存在を知ってもらえてよかった」と満足げに語った。
「自分は医師として人間として、非常に評価されている。ピニェイロス区などに強い基盤があるが、まだまだ知名度は低い」という同じく無名の飯塚フラビオ候補(43、PCdoB)も、イベントには好意的な感想を抱いたようだ。「党の誘いを受けて出馬を決意した。当選後も医師業と両立していきたい」と明かした。
64%の市民がSUSではなくコンベニオを使っているとし、「改善するための様々なアイデアがある。危機的状況にある医療について、きちんと理解している人間を選んでほしい」とアピールした。
スポーツ医師で羽藤ジョージサンパウロ州議の息子でもある羽藤ジェオルジ候補(31、PMDB)は専門のスポーツと健康に関し、市民の運動不足などに懸念を示した上で「体育を学校の授業に取り入れるべき」などとのべ、企業家の山内タバタ候補(38、PRB)は、母親がもっと自由に働けるよう、特に幼稚園や保育園の職員を養成する必要性を説いた。
有川チアゴ候補(32、PMDB)は子供と青少年の権利に関する州の評議員会のメンバーとして、「15歳から社会活動に携わっている」と自己紹介し、学校のいじめ問題、ゴミ問題などに触れつつ、健康や教育、環境について自らの経験に基づく提言を行った。
小林ヴィットル補欠市議(37、PSD)は、唯一自身のこれまでの活動をまとめたスライドを用いて発表。父の故小林パウロ下議がPSDB設立に尽力し、自身もPSD設立に協力したことを強調。旧南米銀行に勤務、2005年の父の死後に政界入りを周囲に勧められたと明かした。
「あのときはまだ未熟だったので、設立したインスティテュート・パウロ・コバヤシで父の社会活動を引き継いでやってきた」とアピール。日本文化をブラジル社会で普及する重要性を説き、臨時市議を務めた昨年1カ月間は「非常に多くを学んだ」と振り返った。
その後、第二部はメディア、一般来場者からの質疑応答が行われ、熱心な答弁が予定時間を超えても続けられた。