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サンパウロ市=メトロは車より4倍速い=渋滞時の道路移動は劣悪=「車好き」は国民性か

ニッケイ新聞 2012年9月27日付け

 サンパウロ市内道路の渋滞のピーク時、メトロを利用した方が車よりも4倍速く移動できることが明らかとなり、サンパウロ市民を悩ませる交通事情の悪さが改めて浮き彫りとなった。23日付エスタード紙が報じた。
 同紙が独自に入手した情報によれば、帰宅ラッシュとなる午後5〜8時、電車を使う人は一時間に平均32・4キロ移動する一方、CET(交通技術公社)がエウゼビオ・マトーゾ、レボウサス、コンソラソン各大通りを対象に調査したところ、同じ時間帯に車に乗っている人は一時間7・6キロ、ほぼ歩行者と同じくらいのスピードしか移動できないというひどさだ。
 午前7〜10時はこれが少し緩和され、車の移動距離は一時間20・6キロとなるが、それでも自転車とほぼ変わらないスピードの〃のろのろ運転〃だ。
 サンパウロ市では毎日420万台の車が走っているが、毎日のメトロの利用者はそれを上回る470万人。8月のメトロの利用者(平日の午後9時〜午後5時の間)は146万4千人で、5年前の123万9千人から18・1%増えている。
 州交通局のジュランジール・フェルナンデス局長は、「出発地から目的地まで直行できる車の利便性に、メトロは勝てない」と課題を挙げながらも、「メトロが網羅する範囲が増え、車の利用者が住む家の近くにより多くのメトロの駅が建設されれば、今車を使っている人もメトロを使うようになるのでは」とみている。
 しかし同局長の指摘するとおり、メトロを利用した方が速く移動できるにもかかわらず、車を好む人が多いことも事実だ。エスタード紙はその理由として、車のもつ快適性や電車の網羅する距離の狭さ、メトロ駅の駐車場の少なさなどを指摘している。
 実際、「車に乗れば直線距離で30分で行ける職場に、メトロを使うと1時間半もかかる」と比較するのは、市東部ピリトゥーバに住む小売業者、ダイアーニ・サントスさん(29)。車は持っているものの通勤にはメトロを使うのは義務だからで、やむを得ず公共交通機関を利用しているという。
 またメトロと接続する市営バスの質の悪さは、指摘され続けている問題だ。「メトロは便利だが、バスへの乗継がある場合、その利便性はとたんに落ちる」と交通技師のオラシオ・フィゲイラ氏は分析する。
 車の利用者にメトロの利用を促す対策の一つとして、同氏は貸し切りバス(onibus fretado)を挙げており、「プライバシーや快適さ、出発地から目的地まで直行で行けるという利点がある」と説明する。
 かつては市民の交通の足の7割を担っていた公共交通機関だが、その利用率は車の利用が増えるとともに1997年には半分以下にまで減った。
 しかし2004年にメトロとバスの値段を連動させたことでより料金が安くなったため、公共交通機関の利用者が再び増え始め、現在は56%のサンパウロ市住民が車を使わずに移動している。

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