ニッケイ新聞 2012年9月28日付け
家庭内暴力や親の怠惰、貧困などさまざまな事情により養護施設で暮らす青少年を支援するプログラム「Brasil Protege」を、連邦政府が10月12日の子供の日にあわせて発表する準備を進めていると27日付エスタード紙が報じている。選挙キャンペーン時や就任挨拶で、「次世代のための政策を実行する」と宣言したジウマ大統領だが、発表されれば、現政権で最初の人権侵害撲滅をめざしたプログラムとなる。
「子供にとって、一番いい場所は家庭。本当の家族であろうと養父母の家であろうとそれは変わらない」。青少年の権利に関する国家審議会のミリアン・マリア・ジョゼ・ドス・サントス会長は、「まだ政府の提案について吟味している段階だが、試みそのものは評価すべきもの」と好意的な反応を示している。
現在、全国の養護施設に収容されている子供たちは3万8千人にも及ぶ。プログラムには、再び子供たちを家族のもとへ返す試みや養子縁組の奨励、施設の職員や医療や福祉の専門家の養成、施設の新設や改修、子供たちの職業訓練コースへの取り込みなどが盛り込まれる予定で、2006年のルーラ政権時代に発表されたSinase(国家社会教育システム)を強化するという目的も含んでいる。
こういった子供たちは、犯罪に巻き込まれやすいことが指摘されている。特に、未成年がドラッグの売買に巻き込まれるケースは後を絶たない。「こういった仕事には1日100レアル支払われるのが相場で、窮状状態にある子供たちにとっては魅力あるものに見えてしまう」。レリオ・フェラース・シケイラ・ネット検察官はこう指摘し、「こういった青少年への対応においては福祉だけでなく、医療や教育も重視すべき」と主張している。
なお、国家法務審議会(CNJ)のデータには、青少年が巻き込まれた犯罪件数として9万件も登録されており、2014年W杯の開催都市を中心に横行している児童ポルノや買春など、子供たちの性的搾取を根絶することも喫急の課題だ。
サンパウロ市では143カ所の施設で2834人の子供たちが暮らしており、各施設に対しては毎月市から8100レアルの補助金が出ているが、施設自体も問題を抱えている。警察署や留置所と同じく超満員状態で適切なインフラが整っておらず、国内10カ所の施設を視察した国連の担当者は「懸念すべきもの」と実情を重くみたようだ。この10カ所の施設は拷問やひどい扱いをすることで知られているという。