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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月29日付け

 東京の—いや日本の顔が、1914年(大正3年)に完成した姿に戻りあの優雅な赤煉瓦の駅舎が見事に復元された。明治建築界の重鎮で日本銀行本店の設計もした辰野金吾博士が、赤煉瓦を白い花崗岩で縁取り、屋根は黒のスレートを敷く見事なばかりの美意識を発揮したのが東京駅である。あの戦災で空襲に直撃され被害は大きかったが、全てを昔の駅舎にしたのは、やっぱり凄い▼あのスレートは遯生が生まれ育った隣町の宮城県登米町と石巻市雄勝の山で生産されたものであり、子どもの頃にお風呂に入りながらお袋などによく聞かされたものである。登米の坑道は廃坑になり、今度の復元には石巻の熊谷産業が陣頭指揮にあたり、東京駅の屋根から13万5千枚を一枚ずつはがして石巻まで持ち帰り汚れを落としサイズを整えて7万1千枚を東京駅に送り返したのだそうだ▼5年も掛かった復元工事で創建の頃の南北ドームが蘇り駅の中央にある駅長室なども綺麗になったと報じられている。一日に3千本もの鉄道が発着する「ステイション」(明治生まれの人たちは、駅をこう呼び話した)であり、駅舎の地下には免震装置を新設しての耐震強化と立派な駅舎になったのは喜ばしい▼駅には東京ステイションホテルも開業し、ロイヤルスイーツは一泊1万ドルとかなり高い。もっとも世界一はスイスのプレジデント・ウイルソンで6万5千ドルもし、広さが1670平米もありレマン湖を眺める絶好の位置だそうな。これに比べれば東京駅のは激安?であって—まあ上級の「旅人宿」かな。と、10月1日のオープンである。(遯)