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心臓病による死にも社会格差=死者の減少率に所得差=食生活の変化も影響か=15歳少年の突然死も

ニッケイ新聞 2012年10月5日付け

 サンパウロ総合大学(USP)付属病院の調査によると、サンパウロ市での心臓血管障害による死者は減少傾向にあるが、その減少率に社会格差が見られると1日付エスタード紙が報じた。医療技術の発展などの恩恵が平等に届いていない事や食生活の改善の必要などが改めて浮き彫りにされている。
 サンパウロ市における心臓血管障害による死者は1996年〜2010年に19万7770人おり、死者の発生率は年々減っているが、減少率は性差や社会階層により違うとの報告は、6月に発行された雑誌「国際心臓ジャーナル」にも掲載された。
 USP教授らがまとめたデータによると、心筋梗塞や狭心症のように血管の一部が詰まったりして起きる虚血性心疾患などの心臓血管障害による死者は男性の方が高く、2010年の10万人当りの男性の死者は、高所得地域で約410人、低所得地域で約280人、中間層では約370人。女性の場合、高所得地域で約270人、低所得地域で約180人、中間層では約240人だった。
 これらの数字はいずれも1996年より減っているが、年間の平均減少率は、男性の場合、高所得地域で4・1%、低所得地域で2・5%、中間層で3%と、明らかな差が出ている。
 女性の場合は所得による差は男性よりやや小さいが、それでも、高所得地域では3・7%減ったが低所得地域は3%の減少と差がある。女性の場合の中間層での減少率は3・6%だった。
 この調査結果は心臓血管障害は金持ちの病気という通説を覆すもので、調査を担当したパウロ・ロツフォ医師は、心臓血管障害による死者の減少率に差が出たのは、サンパウロ市内の医療体制の格差と社会階層による生活習慣の差が原因と見ている。
 心臓血管障害で死に至る病気の代表は心筋梗塞だが、心筋梗塞は発作後の処置の早さが生死を分ける。そういう意味で、速やかに病院に運ぶ事と迅速かつ的確な診断が不可欠だが、サンパウロ市では、知識と経験が豊富な医師がおり施設も整っている病院は中央部に集中し、周辺部で不足している。
 また、最近は高所得者の健康管理が進む一方、低所得の人々に肥満や運動不足が見られるようになっており、偏った食生活や生活習慣も心臓疾患による死の減少を妨げていると見られている。
 このような傾向はサンパウロ市に限った事ではなく、大サンパウロ市圏のグアルーリョス市では3日、体調を崩しては保健所に通うを繰り返していた15歳少年が体育の時間に倒れ、教師から心臓マッサージを受けた後に病院に運ばれたが、既に事切れていたという報道があった。
 検査の結果、つい最近も保健所に行ったという少年は心臓肥大を起こしており、肺が圧迫された事で死に至ったと判断されたが、両親達も少年が心臓の病気である事を知らなかったという。
 9月25日にはピアウイ州の農村部でも、川で水浴中の15歳少年が心臓発作を起こして死亡している。