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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年10月12日付け

 ジルセウ官房長官(当時)、ジェヌイーノPT党首(当時)らがメンサロン裁判で有罪判決を受けたことは、ブラジル史に残る画期的な出来事だ。与党幹部が深く関与した汚職事件を、与党の大統領が指名した最高裁判事が有罪判決を下す意味は大きい。これは司法の独立を如実に示すものであり、ブラジル民主主義の成熟度合いを表す好例だ▼特に注目したいのは、最高裁初の黒人判事にして、同裁判で責任判事という重責を担ったジョアキン・バルボーザ氏の存在だ。ミナス州パラカツー生まれで、父親はレンガ職人、母親は文盲。貧困階級の出身で、8人兄弟の長男だ▼両親が離婚した後、16歳で単身ブラジリアへ出て働きながら公立高校を終えた苦労人。ブラジリア大学法科を卒業後、パリ大学で博士号を取得、仏語、英語、独語、スペイン語が堪能という秀才中の秀才だ▼実は歴史上ほかに2人のネグロ最高裁判事がいるが、Veja誌03年5月14日号は「ムラート」(黒人との混血)と表現しており、「まったくの黒人」は初のようだ▼03年に就任したルーラ大統領は「サンパウロ州人、北東ブラジル人、黒人」を一人ずつ最高裁判事に任命しようと決めていたと同誌にはある。まさに彼を大統領に押し上げた有権者勢力そのままだ。サンパウロ州人にはペルソ氏(4月まで最高裁長官)、北東ブラジル人にはブリット現長官、そして11月から長官になるバルボーザ氏だ▼奇しくもルーラが指名したこの3人がメンサロン裁判の中心人物だった。自らの政権の腹心が次々に裁かれることで、司法責任者を選ぶルーラ元大統領の目が確かだったことを証明したのは、どこか皮肉だ。(深)