ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 史上初の50位以内!=国際競争力のランク上昇=トップクラスはまだ遠いが

史上初の50位以内!=国際競争力のランク上昇=トップクラスはまだ遠いが

ニッケイ新聞 2012年10月16日付け

 スイスに本部を置く経済研究機関の「世界経済フォーラム(WEF)」が9月に発表した2012年版の国際競争ランキングでブラジルが48位になり、50位の壁を初めて突破したが、上位に躍り出るには解決すべき事が山積と15日付エスタード紙が報じた。
 各国の政官財の指導者が集まるダボス会議の主催者団体でもあるWEFは1979年から国際競争力ランキングを発表しており、2011年のブラジルは53位。今回はランキングを五つ上げ、初の50傑入りとなったが、144カ国中48位との評価は、国内総生産(GDP)世界6位という実績に見合うまでの道が遠い事も物語っている。
 ランキング1位はスイスで、以下、シンガポール、フィンランド、スウェーデン、オランダ、ドイツ、米国、英国、香港、日本と続くが、上位10傑に入るには、市場の大きさとコモディティ輸出に頼る現状を大幅に改善する必要がある。
 貿易を例にとって見ると、ブラジルが世界貿易に占める割合は1・4%で、輸出の大半は大豆や鉄鉱石、カフェといったコモディティ(基本的な一次産品)が占めている。
 また、マット・グロッソ州で購入した1トンの大豆を中国の上海に運ぶ輸送費は180米ドルかかり、最終価格の30%を占めるが、米国アイオワ州ダベンボートで買った大豆1トンの輸送費は108米ドルで最終価格の19%。生産者から安く買っても結果的に高い買い物になりかねないのがブラジル産の品々だ。
 輸送インフラの整備の遅れに追い討ちをかけるのが、重税や手続きの煩雑さなど。市場規模(の大きさ)では9位でもインフラ70位、法整備79位、保健衛生や初等教育88位、資本関係の市場効率104位という数字の改善には、熟練労働者不足解消にも繋がる教育拡充や、空港や港、陸上輸送網の整備と製品開発のための投資増額、税制改革などが急務だ。
 税制改革の必要は永年叫ばれているが、所得の半分は税金に食われ、電力や労賃などの生産コストが高い上、工場開設にも膨大な書類を用意しなければならない現状は、ブラジルの発展を妨げるボトルネックの一つ。9月発表の電力料金引下げや昨年から続く経済基本金利引下げなどの政府努力と共に、公共投資拡大が望まれるところだ。
 留学制度拡充などで言語の壁を越え、多国籍企業の幹部に抜擢されるなど、国外で成功する人が増えてきているのはこれらの弱点の裏返しでもある。だが、近年並みの急激な経済成長は望めない中、民族の多様性などの利点を生かし、突破口を見出す工夫も必要となる。