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サンパウロ市の麻薬地帯に軍派遣?=国と州の思惑が交錯=サンレーモでは地下通路も=外出禁止令の噂広がる

ニッケイ新聞 2012年11月2日付け

 【既報関連】10月29日に始まったサンパウロ市南部のファヴェーラ・パライゾポリス飽和作戦に続き、10月31日は市西部のファヴェーラ・サンレーモに軍警の捜査の手が伸びるなど、州都第一コマンド(PCC)包囲作戦が展開されているが、連邦政府が軍派遣と言い出したのに対し、サンパウロ州政府は安易な便乗策と批判していると、1日付伯字紙が報じた。

 29日からのパライゾポリス飽和作戦はPCC包囲作戦(出入り口を閉ざした上で多数の警官を配置して飽和状態にする方法)の第一歩で、北部のフネラリアや西部のサンレーモのファヴェーラも、州保安局の手が入り始めた。
 パライゾポリスで30日に見つかった軍警や市警40人程のリストはPCCが様々な方法で情報収集をしている証拠で、「ある軍曹は17時に勤務を終えるとバールへ行く」など詳細な記述がされている。PCCは逮捕者1人に付き軍警1人、死者1人に付き軍警2人の殺害を命じており、今年に入ってからの軍警の死者は1日未明の2人を含め88人。大半が勤務時間外に殺されており、州政府も9月に勤務時間外の死であっても補償する事を決めている。
 一方、緊迫した状況下でのファヴェーラ飽和作戦で他の部署が手薄になる事を懸念し、パライゾポリスへの軍派遣を提案しているのは法務省傘下の国家保安局だ。
 連邦政府からの支援の話は選挙直前にもあり、選挙前夜にアントニオ・フェレイラ・ピント州保安局長がジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法相に「実際に申し出てもいない事を申し出たと嘘をつくのか」と問うたところ、「周囲に圧力をかけられ、そう言わなければ殺されかねなかった」との返事がきたという。
 州政府は当面、軍の派遣を仰ぐ意志はないと見られ、ジェラウド・アウキミン知事は10月31日、PCCの幹部はRDDという独房に入れての特殊教育の対象にする可能性ありと発表した。
 他方、9月に起きた軍警殺害事件の容疑者7人の逮捕状を持った軍警が踏み込んだサンレーモでは、麻薬や銃器の他に、隣接するサンパウロ総合大学(USP)との壁から50メートルの所まで伸びる15メートルの地下通路が発見された。この通路は監視カメラ付きの地域首領の家と麻薬精製所、販売拠点に使われていた家の計3軒をつないでおり、大麻などが欲しい人も、壁の穴を使えば、USP構内から購入できる状態だった。
 サンパウロ州の〃暴力の波〃はPCCと軍警が殺されれば殺し返すという図式が出来ているためと見られているが、サンパウロ市圏では1日未明も軍警2人と市民3人が殺され、PCCによる外出禁止令が出たとの噂も流布。戦々恐々とする人は増加の一途で、大学を含む教育機関が授業を中止したり、仕事を早めに切り上げさせる企業が出てきたりと、その影響が拡大している。