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第2回=ブラジリア=あちこちにピラミッド?!=表象散りばめた不思議都市

ニッケイ新聞 2012年11月7日付け

 ブラジリア空港に到着した故郷巡り一行はバス3台に分乗し、さっそく市内観光へ。チョビ髭のバスガイド、ジョアン・パリトーさんはボソボソと首都建設の歴史を説明し始めた。
 「やがて、国家の重要な決断を行なう頭脳に変貌する、この中央高原、この原野より、今一度わが国の未来に眼を注ぎ、その大いなる前途に、強固な信念と無限の信頼を抱いて、黎明を予見するものである」。1956年1月に就任したジュッセリーノ・クビチェッキ大統領(以下、JK)が、同年10月に遷都予定地を初めて訪れた時の有名な言葉を、滔々と暗誦しはじめた。
 さっそくガイドに近寄り、藤川さんから聞いた「首都がイナウグラソンされたのが1960年4月21日。その日に三権広場に立つと、朝日がH型にそびえ立つ連邦議会ビルの間から昇るように設計されている」という噂を確かめると、「その通りだ」と当然のように答えた。
 「やはり」と合点がいく。エジプトの有名なラムセスⅡ世により紀元前1250年頃に造られた「アブシンベル神殿」は、彼の誕生日(2月22日)には、一番の朝日が47メートルも奥にある彼の像を照らすように設計されているのに似ている。近代都市ブラジリアの設計は、古代エジプトを発想の源泉としているようだ。
 というのも『ブラジリア日系入植五十周年』(以下『ブ五十周年』と略、Feanbra、08年)の中で、同地在住で元日本国大使館顧問弁護士、今井眞治さん(コチア青年)が、こう要約しているのを読んだことがあるからだ。「ブラジリアでは、すべてのものがエジプトのタロットの哲学とヘブライのカラバの数理学を基礎としている」(77頁)。
 そもそもこの町の形が鳥形で、エジプト神話の鳥イビスを発想の源泉とするデザインだと今井さんは書く。あちこちの細部にもピラミッドが散りばめられており、その一例はJK記念館だ。上部を切り取ったピラミッド構造をしており、ガイドは「彼はエジプトやピラミッドに興味を持っていたから、この形になった。下には遺体が安置されている」と説明し、まるでエジプトの王族扱いだ。
 最もモダンで人工的な都市の核心には、実は人類最古の文明のカケラが秘められている。
 国会議事堂に関する今井さんの説明も興味深い。連邦議会ビルは2本のビルが中間でつながれたH型をしているが、これはHOMENの頭文字で、直立した人間の不死身性を表現しているのだという。さらに上向きのお椀は「下院」で、下からの民衆の力を示すと同時に、宇宙のエネルギーを吸収することを意味する。下向きのお椀は「上院」で力のコントロールを示すと同時に上から吸収した宇宙のエネルギーを開放する(『ブ五十周年』79頁)という。
 さらに陸軍総本部ビルの入り口へ。1822年にポルトガル軍とバイーアで戦って勝った独立の英雄〃陸軍の守護者〃ドッケ・デ・カシアスが使っていた楯を横にした形の巨大な門構えで、内壁はフクロウのように見える図柄がある。
 これはカシアスがフリーメイソン会員で、彼の属したそのグループのシンボルがフクロウだったことから図案が生れたという。フクロウの前で手を叩くと、木霊が響きわたるようにオスカー・ニーマイヤーが設計しており、独特な神秘空間になっている。(つづく、深沢正雪記者)

写真=故郷巡り参加者のみなさんの後ろにそびえ立つ2本のビルが連邦議会。中央が通路でつながってH型をしている