ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | オバマ再選でブラジルは?=ジウマにとっては希望通り=ビザや国連の問題は継続

オバマ再選でブラジルは?=ジウマにとっては希望通り=ビザや国連の問題は継続

ニッケイ新聞 2012年11月8日付け

 6日に投開票の米国大統領選は、米東部時間の6日23時すぎ(ブラジリア時間の7日未明)、現職のバラック・オバマ大統領(民主党)がミット・ロムニー候補(共和党)を破って再選を決めた。これによるブラジルへの影響と今後の対米事項について7日付フォーリャ紙が報じている。
 オバマ氏再選を受け、ジウマ大統領の側近は「今後の対米の通商関係には影響がない」とのコメントを出した。これは大統領選と同時に行なわれた下院と上院の3分の1の改選結果を指してのもので、こちらも下院は共和党、上院は民主党が多数派を占めるなど、前回2008年の選挙時と変わらぬ結果だった。
 ジウマ大統領個人は、オバマ氏とその政策により強い親近感を抱いていた。両氏は、ドイツをはじめとした欧州諸国に緊縮財政ばかりに走らず、経済成長を刺激する対策をとるように促がすなど、最近の国際会議で似たような立場をとってきた。共和党のロムニー氏は、保護貿易主義色は薄いものの、商業活動の完全自由化を主張するタイプだった。
 またジウマ氏は、ロムニー氏が書面で発表した外交関係の政策に対する不快感も示していた。ロムニー氏は、キューバやベネズエラは社会主義的だとし、政治的イデオロギーに関して批判的な意見を述べていた。
 これで米国とこれまで通りの外交が保たれそうなブラジルであるが、課題は少なくない。最も大きなものの一つとして考えられるのはビザの問題だ。ブラジルから米国への旅行者は急増傾向にあり、12年は180万人に達する見込みだが、世界有数の米国旅行をする国となったにも関わらず、いまだにビザの取得義務が免除されていない。旅行業界のロビー活動もあり、米国議会には、ブラジル人へのビザ撤廃もしくは手続き簡略化の提案が六つ出されているが、撤廃の実現には至っていない。
 また、国連での常任理事国の増枠を望んでいるブラジルに対し、オバマ氏はこの問題を避けたままであることや、米国空軍がブラジルのエンブラエル社の飛行機スーパー・トゥッカーノ20機の購入契約を米国のホーカー・ビーチクラフトの圧力によりキャンセルしたことに対して、米国に再入札を求めていることなども棚上げされたままだ。
 米国議会が、イランやキューバと関係を持つ企業との契約を禁ずる予算案を出していることや、ブラジル産エタノールへの関税問題、ブラジルと米国下院の間で対立している綿の補助金問題も絡む米国の農業法改正の問題などもある。一方の国で払った税金は他方の国で払う免税とするという多国籍企業などの要求は、両国間の税制上の情報交換が必要なため、ブラジル上院で審議が止まっている。