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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年11月8日付け

 先月23日付けで伝えた、広島の原爆で被爆して12歳で亡くなった佐々木禎子さんをモデルにした平和の像「サダコ像」が米国シアトルで破壊行為にあったとの記事を見た時、米国民の中に隠された荒々しい国粋的、白人中心主義的な傾向を感じた。薄氷を踏むような今回のオバマの勝利で、ほっと胸をなでおろした在米日系人も多いに違いないと想像した▼興味深いことに、ブラジルのメディアでは早い段階から「親オバマ」を表明する政治評論家の声で溢れていた。在米ブラジル人、ヒスパニック、黒人などの少数民族への待遇は、明らかにオバマの方が手厚い。その延長線上に外交政策があるとすれば、ブラジルへも協調的な態度で接することが想像され、それゆえブラジル内でもオバマ支持が多いと推測できる▼当地のメディアでは、米国大統領選挙に関して「世界で最も権力のある人物を選ぶ」との枕詞がよく付けられ、先週あたりから自国選挙以上の扱いで報じており、まるで〃世界の大統領〃を選んでいるのかと錯覚するほどだった▼事実、7日付け「東西」欄にも「ジウマ大統領に投票権があればオバマに」とのコラムが出ていたが、野田首相ならどちらか。どちらの候補が日本に都合が良いかは同様に注目されていいはずだが、何故か日本では、そのような議論はあまり熱心ではなかったようだ。米国サマサマで、日本では誰がなっても従属すると最初から決めてかかっているのかと疑いたくなる▼二度目のオバマ当選に関する当地専門家のコメントの中で、「これで米国は白人中心国家から、ブラジル型の多民族主義国家に一歩近づいた」との分析が最も腑に落ちるものだった。(深)