ニッケイ新聞 2012年11月10日付け
連邦政府が8日、全ての子供が8歳までに識字力を身につけるための「適正年齢での識字国家協約」を発表した。9日付エスタード紙によると、13、14の2年間で27億レアルを投じて識字力向上を図るという内容だが、識字力を測るための試験はまだ出来てないなど、周囲では期待と不安が入り混じった声が上がっている。
現在のブラジルの基礎教育は9年間だが、3年間終了までに全児童が読み書き出来るようにするための新政策は教師訓練や教材配布、識字力測定のための試験などの諸項目を含み、計画の意味の「プラノ」ではなく、協約、条約などを意味する「パクト」という言葉が使われている。
「私立校では5、6歳で識字教育を行うのに、公立校生徒の識字教育は8歳まででいいのか」というのは、教育コンサルタントのイロナ・ベクスケハージィ氏だ。8歳までの子供の15・2%が自分の名前を書いたりごく簡単な文を理解する事も出来ない状態を改善するための第一歩だ。具体的には、13年末までに識字力を評価するための試験を作り、公立校在籍の7歳児に適用。14年は7歳児と8歳児に試験を受けさせ、識字力の改善度を評価する。
ブラジルの基礎教育(小中学校課程)の習熟度の低さは08年創設の全国試験〃プロヴィーニャ・ブラジル〃でも指摘されているが、そのプロヴィーニャが果たすはずだった識字力の測定・改善の役割を新しい試験に担わせるのが今回の政策だ。
先に挙げた、自分の名前が書けず簡単な文の理解も出来ない8歳児が15・2%というのは統計上の文盲率で、教育の現場では自分の名前が書ける程度では識字力ありとはみなさない。読み書き能力は学習能力の基礎の基礎だが、大学入学後もポ語の補習を受けなければならない学生がいるというのがブラジル。高校生が受ける国際的な学力試験でブラジルの成績が振るわないのも、ある程度はポ語力の不足が原因だ。
また、プロヴィーニャでは、試験の結果が各校に通知されないために改善点や改善策が確定できないといった問題が生じており、結果の有効利用は新政策の課題の一つ。
現在の力の評価もせずに教師の訓練や教材の配布を行い、その後の13年末に試験を行うというやり方も問題だ。この手順では訓練の効果や教材の良し悪しを判断出来ないはずだが、ジウマ大統領は「子供達がちゃんと理解しているか、特定の内容の強化が必要か、教材や教授法が適切か、教師や学校はやるべき事をやっているかといった諸項目を評価するには全国規模の試験やシステムが必要だ」とし、新政策の導入を弁護している。
教師の訓練は在籍中の学校で行い、1人150レアルの手当てを支給。13年から14年にかけての評価が向上した場合の報奨金には、27億レアル中5億レアルが計上されている。