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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2012年11月10日付け

 「私のことを知りたくば作品を観なさい。絵描きに言葉はいりません」。画家・榊原久雄さんの遺作展で、作品の飾られる壁にポ語で記されていた言葉。生前に本人が残したものだそうだ。
 榊原さんは作品を公に発表することに積極的ではない人だった。美術展の類にも、依頼されてようやく数点を出す程度。事実、60年に及ぶ画家生活の中で、個展の開催は今回が初めてである。
 そんな彼が余命幾ばくもないと知って初めて、自身の作品の展示を強く望んだそうだ。金子さんの提案・協力で出版した画集が評判になったこともあり一気に実現の運びとなったが、開催を目前にして息を引き取った。
 氏は筆が持てなくなる昨年まで作品を残し続けた。冒頭の言葉を鑑みるに、この個展はまさに「遺書」。生涯を芸術に捧げた寡黙な画家の生き様を、ぜひ会場にて感じてもらいたい。(酒)