ニッケイ新聞 2012年11月17日付け
サンパウロ州で急激に増えた殺人やバス焼き討ちが14〜15日もエスカレートし、サンパウロ州10市で同種の事件が起きたほか、サンタカタリーナ州でも11市で同様の被害が出ている。16日付伯字紙が報じている。
14日夜から15日にかけ、サンパウロ州では計10市でバスや託児所への放火や殺人などが起き、計14人が死亡した。被害が大きかったアララクアラ市では14日、40分間で5人が覆面をした男たちに殺された。警察官襲撃は13日もグアルーリョスで発生し1人が死亡、14日にはサンパウロ市で2人が銃弾を受けた。
サンパウロ州での惨劇はサンタカタリーナ州にも飛び火している。16日付サイトの報道によると、12日のバス4台の焼き討ち以来、16日正午までに州内13市でバスや乗用車への放火や警察署襲撃などの事件が49件記録された。同州軍警は16日午前9時までに46人を逮捕し、チジュッカス市とイタペマ市では容疑者計3人を殺害した。
サンタカタリーナ州のライムンド・コロンボ州知事は、一連の事件は同州が刑務所の管理を強化した結果と見ている。同州では11年に500人以上の脱走者と11人の死者が出たが、12年の脱走者は125人で死者も2人だ。同州市警のアルド・ピニェイロ司令官は、犯罪組織幹部が刑務所から指令を出す例と便乗した犯罪の両方の可能性を指摘。同州警部協会(Adepol)のレナト・エンドジェス会長は「刑務所にいる犯罪組織幹部は5〜6人」とした上、サンパウロ州の犯罪組織が同州の犯罪を指示している可能性を認めている。
同州では、今年5月にイタジャイー市で、サンパウロ州の州都第一コマンド(PCC)の訓練所が発見された。同州の犯罪組織プリメイロ・グループ・カタリネンセ(PGC)とPCCとのつながりを示す情報もあり、PCCが州を越えて指示を出している可能性が伺える。
ジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法相(労働者党=PT)は、一連の犯罪はブラジルの刑務所のあり方が原因と推測。同相は13日に、「ブラジルの刑務所で長期間服役するくらいなら死を選ぶ」との注目発言を行なった。同相は、ブラジルの刑務所では受刑者の人権が無視され、軽い刑で服役した人が極悪犯になって出所するような風潮があるという。同相はブラジルでの死刑や終身刑には否定的な立場を取った。
刑務所の現状については、ジョゼ・ヴィセンテ・ダ・シウヴァ国家保安局元局長のPT政権は刑務所改善のための投資を怠ってきたと批判。15日付エスタード紙は「刑務所改善費の支出は該当予算の1%未満」、16日付フォーリャ紙は「12年の刑務所改善への予算は5分の1以下しか使われてない」と伝えている。
16日付エスタード紙は、PCC幹部に「人を1人殺せば借金を帳消しにしてやる」と言われた男性が、警官を殺した現場の防犯ビデオ映像を写真つきで伝えている。