ニッケイ新聞 2012年12月6日付け
リオ州ドゥッキ・デ・カシアスで4日、軍警と州検察局、保安局、連警による〃浄化作戦〃が行われ、軍警達が逮捕されたと5日付伯字紙が報じた。ワールドカップやオリンピックを前に治安確保を考える州政府が内側の膿を排出する作戦を進める一方、リオ市北部のアレモン地区で再び銃声との報道も流れている。
軍警と連警、検察局による〃浄化作戦〃は、ドゥッキ・デ・カシアス市内13のファヴェーラの麻薬密売者と癒着し、脅迫や誘拐などを繰り返す警官を逮捕、解体するための大型作戦だ。
4日に逮捕された警官の数は、エスタード紙が61人、フォーリャ紙が63人と報じているが、同市にある第15大隊配属の警官は600人だから、1割強が犯罪に加担していた事になる。
逮捕された警官達は同州の代表的な犯罪組織、コマンド・ヴェルメーリャ(CV)と癒着し、月々15万レアルに及ぶ金を受け取っていたとされ、金の支払いが遅れたら密売者やその家族を誘拐し、金を受け取ったら開放するといった悪行を繰り返していた。
1年前から進められた捜査に基づき、逮捕令状や捜査令状を手にした軍警や連警は、第15大隊や告訴された警官宅、ファヴェーラなどを捜索し、60余人の軍警と退職判事ら11人を逮捕。軍警4人と市警9人は行方をくらましている。
盗聴では、エストレラという暗号名の仕官が20万レアルを要求していると聞いた密売者が「そんな金はない」と答えると、「ごたごた言わずに30分以内に返事しろ。そうでないと大変な事になるぞ」と脅す場面や、AKと7・62という2種類の小銃があると持ちかけた軍警が値段を聞かれ、7・62は4万5千レアルと答える場面などが記録されている。
密売組織はヴァイ・ケン・ケルと呼ばれるファヴェーラ中心に活動。麻薬売買を見逃す代償に1日5千レアルを要求する警官グループもいた。南マット・グロッソ州から届いた銃50丁を軍警が組織に売りつけようとしたとか、軍警が仕事をしていると見せかけるために密売者が押収物件として提出する武器を提供といった報告もある。
逮捕された警官の中には、犯罪者が抵抗したために射殺したと報告された事件が1人で40件以上ある軍警もおり、第15大隊司令官は管理不行き届きで罷免された。
他方、09年11月28日に戦車なども繰り出して制圧され、今年3月から平和駐留警察隊(UPP)設置も始まったリオ市北部アレモン地区のファヴェーラでは5日未明、UPP軍警と麻薬密売者の銃撃戦が発生。今回の銃撃戦は11月27日以来3度目で、軍警1人が頭部に被弾した。
リオ市内のファヴェーラ平定化で活動の場が狭められた麻薬密売者が郊外に足を伸ばしているとされるリオ州。治安当局が内部浄化で気を引き締めてかからないと、大型イベント前に治安確保との約束が遠のいていく。