ニッケイ新聞 2012年12月11日付け
サンパウロ市北部ジャルジン・ブラジルで9日未明、バスが焼き討ちに遭い、乗客ら2人が焼死する事件が起きた。警察によると、この事件は、数時間前にあった軍警による地域青年殺害に対する報復だという。10日付伯字紙が報じている。
焼き討ちは午前4時30分頃、ジャルジン・ブラジルのブラジリオ・アウヴェス・モランゴ通りにあるエロチデス・デ・カンポス広場で起きた。放火された際、運転手と車掌は乗客に逃げるよう指示したが、2人が逃げ切れずに焼死した。1人はボリビア人の男性で、眠っていたために火に気が付かず、もうひとりはこの男性を救出しようとバスの中に乗り込んだ広場の監視人だった。
この焼き討ちは、数時間前の午前1時30分頃に同広場から3区画離れたカピトン・アルクック通りで起きた、軍警による青年殺害事件に対する抗議行動だ。殺害されたのはマイコン・ロドリゲスさん(17)で、友人のヴァルテルネイ・ダ・シウヴァさんも重傷を負い入院中だ。
軍警は当初、マイコンさんは麻薬密売の前歴があり、職務質問をしようとしたら銃撃してきたために射殺したと報告したが、付近住人は「マイコンさんたちは武装なぞしておらず無抵抗だった」と警察に訴えた。これを聞いた市警は、9日夜、関係した軍警6人を殺人と殺人未遂で逮捕した。
この事件では、銃声を聞いて玄関まで出、現場を目撃したマイコンさんの兄弟のマルセロさんも軍警に暴行され、頭骸骨骨折の重傷を負って入院中だ。母親は、マルセロさんも助かるかどうかわからないという。
付近の住民たちは、同事件の直後、警察車両の周りを囲んで軍警に抗議したが、軍警は威嚇するために発砲し、住民たちを追い払ったという。
この銃撃事件とバス焼き討ちのさらに数時間後の午前11時には、同地区でもう1件のバス焼き討ち(負傷者なし)が起きている。
マイコンさんたちが襲われた地域は軍警に封鎖されたが、付近では警官に爆竹を投げつける住民たちがでるなど、1日中緊張関係が続いた。住民たちはマイコンさんの写真のついたTシャツを着て集まったが、軍警たちは群衆をゴム弾で追い払ったという。
市警では、同地域で起きたバス焼き討ちはマイコンさん殺害に腹を立てた地域住民や麻薬密売者が起こしたものと見て、火傷で病院に来た人物など14人を逮捕した。そのうちの数人はマイコンさんと同じ10代の少年だったという。
サンパウロ州では軍警と州都第一コマンド(PCC)との関係悪化以来、バス焼き討ちが続いており、今年に入ってからの襲撃事件は46件となった。