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12〜13年夏季=9万8千人に危険及ぶ?=雨による家屋倒壊や地滑り=遅々として進まぬ市街化

ニッケイ新聞 2012年12月12日付け

 集中豪雨なども起きやすい夏を前に、サンパウロ市では9万8千人もの人が、大雨による家屋倒壊や地滑りの危険性が非常に高いところに住んでいると11日付フォーリャ紙が報じている。
 科学技術研究所(IPT)が2011年に作成した、劣悪な条件の場所に建った家やファヴェーラの分布図によると、そうした家やファヴェーラは市内各所に分散しており、11万5千人が家屋倒壊や地滑りの危険性が非常に高いところに住んでいるという結果が出ていた。
 ジルベルト・カサビサンパウロ市市長は、危険性の高いところの住人を退去させたり、防災工事を遂行したりするため、11年に3800万レアルをつぎこんだという。だが、最新の調査では、非常に危険な地域に住んでいる人はいまだに9万8千人おり、家屋倒壊や地滑りの危険が多少なりともある地域を含めると、市内全域で合計51万9千人に被害が及ぶ可能性があるとの結果が出た。
 11年の調査では地理的に見て家屋倒壊などが起きやすいところのみを分析しており、1132世帯は即座に退去するべきだと言われたが、危険地域の人たちの移動は思うように進まず、15%減にとどまった。
 また、11年の調査は冠水だけが起きる可能性のある通りなどは考慮されておらず、詳しい調査が待たれていたが、今回の調査では、冠水なども含む問題が集中している地域は市南部に多いという結果も出た。
 サンパウロ総合大学(USP)設計市街化計画学部のレナト・シンバリスタ教授は、「住環境はまだ劣悪だが、それでも危険地域に住む人の数は減少している」と分析している。同教授によると、1980〜90年は危険地域に住む人の数が増える一方だったが、2003年の調査以降は減少しているという。
 だが、カサビ市長による市街化計画は目標を達成できていない。危険な地域に住む人を減らす目的も持つ6年間でのファヴェーラ市街化計画は、33万2千人の撤退を目標にしていたが、現時点で77%しか達成できていない。市長は「92%実行」と言うが、それはまだ入札も終わっていない進行中のプロジェクトも含めてのことだ。
 専門家によると、家屋倒壊や地滑りの危険のある地域が全て都市化されるには2025年以降だ。IPTによると、市内のファヴェーラは約1600で、詳細な調査ができたのは半分以下。完全な市街化には時間がかかると見られている。
 11日付エスタード紙によると、冠水多発で知られるマルジナル・ド・チエテでは、州政府が水害対策用に6カ所の貯排水施設を建設中だが、完成は2013年第2四半期の予定で、今回の夏には間に合わない。