特集 2010年新年号
ニッケイ新聞 2011年1月1日付け
黒澤儀人さん(59、茨城)=「国民を奮い立たせるものを」
昨年行われた政権交代。今の日本の状況を打開する契機となるとの期待感がにわかに日本を包んだ。
しかし、「民主党のマニフェストは素晴らしかったが裏づけはなかった。そしてここ最近の沖縄の基地問題、近隣国への対応がとてもよくない。心配だ」と表情を曇らす。
「菅首相が一生懸命しても、自民党との足の引っ張り合いで何もできていない」と見ている。
進む仕分け事業についても、「蓮舫議員の『世界2位ではダメなんですか』といった発言にもびっくりした。中国、などとの技術水準の差がなくなってきている。技術は日本が世界に誇るもの、最近では『はやぶさ』の快挙があったが、そんな国民を奮いたせるようなものを生み出して欲しい」と心底願っている。
「昔だったら日本からの経済援助の関係もあり、尖閣諸島の問題なんておこらなかった。中国、ロシアの繋がりが強くなり、日本に迫ってきている感がある。北朝鮮も行き詰れば日本を標的にしてくる可能性がある。中、ロ、韓国、北朝鮮など隣国に対して、どんな態度で臨むのかはっきりと示して欲しい。危機感を持って」と注意を喚起した。
栗本紀子さん(60代、熊本)=「焦っているのかしら」
続く政権交代について、「マスコミが発達しすぎているのかしら。政治も商売も1、2ヵ月では分からない。2、3年は見ないと。評価が早すぎる。温かい目でみるも必要でしょう。日本人は今焦っているのかしら」と問いかける。
「経済も世界全体が悪く、そのサイクルにいるだけかもしれない。ゆっくり歩くのもいい」と日本を温かく見守っている。
萩窪知世さん(76、東京)=日本人でなくなる日本人
「日本のシンボル、一番きれいな国旗の姿を見られない。それが一番悲しい。私は〃日本〃に帰りたいの—」。かつてのような日本らしい日本に戻って欲しい、そんなな想いが言葉の端々からあふれている。
オリンピックでの日本選手を見た時、「『君が代』をちゃんと歌っている選手がいない」ことに心底驚いた。国を代表する選手がどうして国歌を正々堂々と歌わないのか、何かがおかしいのではないか、そんな気持ちがふつふつと湧いてくるという。
「日本に帰国した時、街で米国の国旗は見かけるのに日の丸は見なかった。戦争とは何にも関係なく、日本人であるなら国を思い、そして愛してほしい。そうでないと、一番大切な日本人の心がなくなってしまう」。なにかが本来の日本人の心をすり減らしているように見える。それが一番悲しいことだと荻窪さんの胸を締め付ける。
彼女の見るところでは、今の日本人に国を思う気持ちが見えないことと、混迷する現在の状況とが無関係でない、むしろ密接に関係していると感じるという。
樋口香さん(74、新潟)=最大の問題は国民の無関心さ
民主党菅政権での最近の諸外国との外交について、「尖閣諸島で中国ともめていたとき、ロシアが出てくるのはわかり切っていた事。日本政府はその情勢を知っていた、知らないか、何にも対応をしない。なんとも情けない状態だった」と憤慨する。
「北方領土には自衛隊の基地を作って日本の領土と主張すべき。その上でロシアとは平和条約を結び、日本企業の進出も進め、多くの利益をロシアから引っ張って来ないといけない」と大胆な提言をする。
12月14日に発表され、極めて異例とされる防衛省からの首相秘書官の起用で普天間基地へのてこ入れが行われるとされたことは「評価すること」と述べるが、「まず基地のある県はそれを当然の義務として受け入れるべきで反対するのはおかしい。それなら戦後65年も経ってまでアメリカ軍に頼りっぱなしの状況を止め、18歳からの徴兵も考慮すべきである。マスコミにはそんな意見は一切無い」とバッサリ切る。
「民主党もだめだが、今の自民党はもっとだめ。谷垣総裁は何につけて頼りなく、弱腰で『俺がやるからついてこい』という気迫が無い」と突き放す。
「しかも何より問題なのは、今の日本人がそれらのことに何にも関心が無いように思うこと。ブラジルの日本人の方が、日本の問題についての議論が多い」と嘆くことしきりだ。
池田秋久さん(64、鹿児島)=人材育成が日本の生きる道
尖閣諸島での中国人船長釈放のニュースを挙げ、「外交下手の日本。中国になめられている。毅然とした態度を望む。自信をもって諸外国に対応してほしい」と提言する。
「いくら悪い悪いといっても、日本はまだまだ世界で5本の指に入る経済大国でしょ。しかし、それも今後の若者の育成が大きな課題でしょうね」と若者のあり方に疑問を呈する。NHKや報字紙の報道からは、どうも若者の頼りない感じが否応なしに漂ってくる。
「今の若い人たちは自分の価値をあげようとしないように見える。大学には卒業証書をもらいにいくだけ。学習する思いではない」と嘆く。
「私達の時は資源の無い国だから、『お前らが国を良くしろ』と言われて育った。企業も、大学も若者を育てる意識をもっと持ってほしい。引きこもりでない、国際感覚の人材を育てることが日本の生きる道」と語った。
いつの時代にも「今の若者は——」と言われ、それを年寄り苦言のだと若者は嫌うが、それはそれで一理あることを、いずれ年寄りになる若者たちも理解するに違いない。