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現有施設の活用で活性化=汎スザノ文化体育農事協会(ACEAS)元会長=東 ルイス

特集 2010年新年号

ニッケイ新聞 2011年1月1日付け

 「僕はあまり日本語が得意じゃないから、ポルトガル語で話します」と前置きしながらも、日本教育や祖先からの文化継承に関しては並々ならない情熱が感じられる。
 「最初はアセアスの会員をどう増やすか、文協をどう持ち上げるかという命題だった」と学校創立の意外なきっかけを明かす。東さんが97年に協会に入った当時、会員は減る一方で、みなどうしていいか分らない状態だった。そこで会員にアンケートをとってみると「学校が欲しい」という声が多かった。サンパウロ市の有名校にやると下宿代もかかり費用が高い。親元から通わせられて、学費が高くない全日制の学校が欲しいとの要望だった。
 「私自身、子供の教育に関係して日本語学校や公立校の父兄として、学校運営に協力してきた経験があったから、その気持ちが痛いほどよく分った」と共感を覚えた。学校の送り迎えに加え、今日はコンピューター教室、明日は英語塾とあちこちに連れて行く手間は大変だった。だから日本語学校を辞めていく生徒が多かった。
 「それならやってみよう」と00年に定礎式をしたが、実際に校舎を建てたのは05年、授業を始めたのは06年だった。「なんでそんなに時間がかかったかといえば、お金がなかった」と頭をかくしぐさをする。
 アセアスにはプール、テニスコート、野球場、陸上競技場、体育館などスポーツ設備が整っていたし、調理室もあったから、学校にするにはうってつけだったが、老朽化していたから改修工事が必要だった。うどんやヤキソバ祭りを毎年何回もやって資金をつくり、少しずつ体制を整えた。
 06年に42人の生徒から初め今は360人。毎年のように増改築を続け、教室も25に増えたが、月謝は400〜500レアルに抑えている。「全日制としてはかなり割安だ」と胸を張る。当初の構想どおりのものが実現されつつある。
 朝学校に連れてくれば英語、日本語、コンピューター、スポーツ、そろばんなど一ヵ所でできる。公教育に日本語が入っていれば、まだまだ勉強させたい親は多い。
 学校に入学するには、会員になる必要がある。だから会員も増えた。卒業しても何割かは残るし、大学や仕事の関係でいったん離れても、いずれ帰ってくると考える。
 地方の文協には、立派な運動設備を備えているところが多い。だったらアセアスのように学校を作って活性化させるためのお膳立ては整っている。「すでにある設備を活かして日本語を残し、コムニダーデを活性化できる」と力をこめた。