ニッケイ新聞 2011年1月7日付け
拓魂の味がするチョコレート——。トメアスー産カカオ100%使用のチョコレートが4月に日本で発売との朗報を日系社会面で報じた▼その箱の裏面には「アグロフォレストリーは〃森をつくる農業〃と呼ばれ、森林伐採後の荒廃した土地に自然の生態系に習った多種の農林産物を共生させながら栽培する農法です。明治製菓はこのカカオ豆をつうじて森林再生へ貢献する活動を美味しさとともに応援します。ブラジル産カカオ豆の特徴である酸味をいかし、カカオの香りのキレのあるあじわいに仕上げました」と印刷されている▼コラム子も写真でしか見られないのが残念だ。発売された折にはぜひ賞味してみたい。思えば今年はジュート栽培を広めた高等拓植学校卒業生のパリンチンス入植80周年という、アマゾン移民には記念すべき年だ▼普段何気なく食べているチョコだが、カカオ豆一つにいろいろな歴史が刻まれている。通常はアフリカ産のものが多いが、これから森林農法が普及するに従いアマゾン産がどんどん増えていく。たかがチョコだが、従来の収奪農法から環境と共生する森林農法へと移り変わることは、文明の大きな転換点を思わせる▼明治製菓に続いて、日本企業とブラジルの日系農業組合が提携した環境志向の新商品が次々と生まれれば、さらに大きな流れになるだろう▼環境保護という観点だけでなく、アマゾンにかけた幾多の事業主や移民の夢が実現された商品でもあるとの物語性も、明治製菓にはぜひ強調して欲しい。優しい「Milk」風味と苦味の利いた「Bitter」風味の2種類だが〃拓魂の味〃には、どっちがお似合いだろうか?(深)