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古参二世の滾る想いしたため=麻生元総理らに〝直訴〟=「今の政治家は腰抜け」=先没者の声に耳すませよ

ニッケイ新聞 2011年1月13日付け

 「現在の日本の政治家は自民党も民主党も本当の政治を知らない。明治と昭和の人たちがどれほど苦労して美しい日本を残してくれたか、世界列強の毒牙を押しのけ祖国日本を護ったか。今の政治家のように、三味線片手に浪花節を語るような政治のしかたパリャッソ(ピエロ)では、とてもとても明治や昭和の防人の魂は分かり様がない」こんな激しい内容の文章を、古参二世の村崎道徳さん(79、二世、ミランドポリス生まれ)は大統領就任式のために来伯した元総理ら国会議員4人に〃直訴〃した。場所はサンパウロ市イビラプエラ公園の日本移民開拓先没者慰霊碑、十数年前から同碑の清掃を担当し、「常に御霊の声や願いを拝聴し意識して清掃管理させていただいている」立場から、一個人として「現在の日本の状況を見るに見かね、滾る思いを堪えきれずにしたためた」という。

 麻生太郎元総理(日伯友好議連会長<自民党>)は慰霊碑に着くなり、村崎さんを見て「お久しぶり!」と気軽に片手を上げて挨拶し、村崎さんは「お待ちしておりました」と頭を下げた。4年連続で慰霊碑に献花する麻生元総理は、村崎さんの顔をとっくに覚えているようだ。
 この〃直訴状〃の話を聞いた記者は当初、昨年11月の「議会開設120年記念式典」で起立されている秋篠宮ご夫妻に対し、「はやくすわれよ」と述べて不満を漏らしたとされる問題を起こした中井洽衆議院予算委員長(民主党)に対するものかと早合点した。
 ところが慰霊碑の面前、そぼふる雨の中、記者の目の前で村崎さんは最初に麻生元総理に渡すと、河村建夫同議連幹事長(自民党)、中井議員、黄川田徹衆議院議員(民主党)にも丁寧に手渡し、名刺交換した。全員に同じ文面を渡したと村崎さんはいう。
 その文面を要約すると、大事なお正月を犠牲にして大統領就任式に出席したことをブラジル民として感謝した上で、「日露戦争の生き残りの移民もたくさん居られました。たとえばあの有名な旗艦三笠のZ信号『皇国の興廃この一戦にあり 各員奮励努力せよ』の信号旗を操作した方、苗字の字を忘れましたが『碇』『錨』さんという方が近所に居られました。日露戦争を生き抜いた初期移民の日本人は愛する祖国日本を背負って日本国に恥じをかけないように一人一人心がけて行動したものです」との日系子孫としての矜持を説明している。
 心がけを示すエピソードとして、欧州移民が来る度に塵芥やツバで足の踏み場もなく汚された移民収容所は、日本移民が来るたびに部屋や食堂がピカピカに清掃され、それを当時のブラジルの新聞が「此れこそ東の紳士の国から来た移民だ」と賞賛した記事を出した、との母親から聞いた話を続ける。
 その上で、今の日本政治家の最もだらしない点として、外国の干渉を恐れて、「国を護って亡くなった方々を祭ってある靖国神社」を参らないことを「腰抜けもよい所だ」と断ずる。
 正月に同慰霊碑に来たことを、「九段の靖国神社の御霊と、分家社会の慰霊碑の御霊があなた方を引き合わせたのです」と因縁付け、「国を護って逝った先没者『戦没者』の声を聴き、其の方たちに応えるために麗しい日本を立ち上げてください」と締め括り、最後に「激しい批判をお許しください」と書き加えた。
 この古参二世の叱咤激励はあくまで一個人として書かれたものだが、移住者に共通する〃憂国の情〃に溢れた文面だけに、国会議員らがどのように感じたか気になるところ。ちなみに12日午後現在で特に何の返答も届いていないという。