ニッケイ新聞 2011年1月14日付け
12日未明にリオ州セラーナ地方を襲った強い雨は、土石流まで引起こし、同地方にたった1日で300人超の死者をもたらした。13日付伯字紙の死者271人という数字が刻々と書き換えられるという大災害に7億8千万レアルの支援を決めたジウマ大統領は、13日に現場を視察した。
1967年にサンパウロ州カラグアタツーバで300人の死者を出して以来の大災害との伯字紙の表現を覆す様に、刻々と変わる死者数。13日16時過ぎの、ノヴァ・フリブルゴ169人、テレゾポリス169人、ペトロポリス39人、スミドウロ17人の計394人死亡の報道は氷山の一角だ。
セラーナ地方を襲った悲劇は、山腹や川底の石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に押し流される〃土石流(または山津波)〃と呼ばれる自然現象が直接の原因だが、もう一つの原因は人口急増で川沿いや山裾にも広がった家屋。岩盤上の土砂が雨水を含んで不安定になった後の土砂崩れや地滑りが複数個所で同時発生して起きる土石流が、山肌や低地の家屋を襲うのは当然で、67年のカラグアや2008年のサンタカタリーナ州も甚大な被害を受けた。
今回の土石流は市中央の高級マンションも襲ったが、12日に現場に赴き、随所にある家屋の残骸や門柱上にひっかかる車、15キロ先まで運ばれた住民の遺体など、目前のもの全てを蹴散らして駆け下った土石流の爪痕をつぶさに見たカルロス・ミンク州環境局長は、この悲劇は「天災と無責任さが招いた」と表現している。
普段は月に10〜15人の遺体が運び込まれるだけのテレゾポリス法医学研究所は、リオ市からの検死官も協力して遺体の身元を確認。遺体引渡しの最低条件も親族による確認のみと緩めたが、それでも処理できない遺体は近くの教会や路上に並べられた。研究所前で家族の消息を尋ねる人の中には親族15人を失った人もいるという。
生存者の救出や遺体の捜索には、昨年1月に大災害が起きたアングラ・ドス・レイス市やニテロイのブンバの丘、地震被害の起きたハイチなどにも派遣された救助隊員や地元住民らも参加。
土砂に埋まってから15時間後に、父親に抱え込まれていた生後6カ月の男児が無傷、父親もケガはしたものの無事救出という奇跡に歓声が上がる場面や、体に縛りつけたロープを頼りに濁流の中から救出された女性などの映像はテレビでも流れたが、新政権初の大災害にジウマ大統領は12日、被災者支援や施設再建などの名目で7億8千万レアルの緊急支援を決定。13日の上空からの現場視察には国防相と保健相が同行したほか、複数の閣僚が現地入りして救援体制をとっている。