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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年1月20日付け

 大規模な災害予測システムを2014年までに構築するとの政府発表があったが、それだけでは解決しない。政治家の役割こそ大切だ▼ここ数年来の大水害発生地の多くが、経済発展と人口増大を受けて20年ほどの間に新しく開発された山間部のようだ。あくまで一般論だが、宅地向きの平地がなくなったために、人が住んでいなかった山間部を切り開いて建設された畑、住宅、リゾート地が被災した場合が多いようだ▼サンパウロ市近郊の被災地なら、人口拡大で本来は住宅には不向きだった湿地が多いバイシャーダを不法占拠したファベーラから始まって、後に選挙の度に合法化されていったような低地が多いようだ。だから同じ場所で毎年洪水が起きる▼先日、グローボTV局のニュースで解説者が「どの市でも崖崩れなどの危険地帯に家を建てることを禁止する法律が出されるたびに、その住民の意を受けた市議によってその法案が葬り去られてきた」との経緯をふり返り、「実際にそこで災害が起きたら、政府は退職金基金を開放し、ソリダリエダーデ(連帯)を目いっぱい強調して救済の英雄譚を次々に伝えてすり抜ける。そして問題の根源はいつまでたっても存在し続ける」と批判していた。まさにその通りだ▼しかし、テレビ・新聞が主に伝えるのは「市役所が悪い、政治家が怠慢」との声であり、住民自体の姿勢を強く批判することは極めて稀だ。メディアも一民間企業だから消費者、視聴者を敵に回したくない。このあたりが商業的メディアや民主主義の限界なのかもしれない。しかし700人以上の貴い犠牲を無駄にしないためにも辛い経験から学びたいものだ。(深)