ニッケイ新聞 2011年1月21日付け
降り続く雨でリオの洪水被害は、20日午後3時半までの死者が、ノヴァ・フリブルゴで359人、テレゾポリスで300人、ペトロポリスで62人など、総計750人にのぼった。そのうち730人の身元が確認されたが、州政府のリストにはいまだ207人の行方不明者がいる。集中豪雨の被害から各地で様々な家族のドラマが生まれている。20日付伯字紙が報じた。
「息子を見捨てて逃げるなんて考えは微塵も浮かばなかった」と話すのは、テレゾポリス在住のマグノ・デ・ジェズス・アンドラーデさん(43)だ。家族が土砂で崩壊した家屋から逃げようとした時、15歳の息子ペドロ君は倒れてきた壁と屋根に左足を挟まれ動けない状態だった。
水位が上がってくる中、マグノさんが必死に瓦礫を取除こうとするもののびくともせず、その姿を見たペドロ君は自分を置いて逃げるよう頼んだという。その言葉にも「お前の足を引っこ抜いてでも助け出してやる」と懸命な救出を続けたマグノさんは、ペドロ君の頚骨骨折は避け得なかったものの助け出す事に成功、泥の中を担いで逃げた。病院に運ばれたペドロ君は「死ぬと思った。ただ父に感謝したい」と話し、マグノさんに寄り添った。
サンパウロ州マウアーでは、孫と夫を助けようとした63歳のアントーニア・アヴェラネダ・グランデさんが同市で7人目の死亡者になった。洪水で家の中にも濁流がなだれ込むのを見て、4歳と12歳の孫をテーブルの上の高い位置まで避難させたアントーニアさんは、マットレスの下敷きになっていた73歳の夫アントーニオさんを助け起こそうとしていた時、倒れてきた冷蔵庫に直撃されて意識を失ってしまったという。溺死したアントーニアさんの遺体は、後に隣家の庭から発見された。娘のアパレシーダさんは、「家族を救おうとするのは母の性格、いつも私達の支えだった」と語っている。