ニッケイ新聞 2011年2月1日付け
国際通貨基金(IMF)が1月26日、ブラジルの金融政策はきめ細かさに欠け、国内総生産(GDP)の3%という基礎的財政収支の黒字目標達成は困難だろうとの報告書を発表した事で、ギド・マンテガ財相が28日、昔ながらの経済論に支配された人間がまとめた的外れな批評と反論。その一方、2010年の政府支出は過去最大との決算報告も発表された。
IMF報告は、中銀の政策基本金利(Selic)引き上げ後に発表されたもので、過去最高額の税収を得たブラジルは政府支出も増大し、GDP比3・1%の基礎的財政収支黒字達成は困難と見ていると1月28日付エスタード紙などが報じた。
IMFは、ブラジルの金融政策は雑で、政府支出を抑制出来ない事がインフレ圧力の一つとなり、政策基本金利引上げをもたらしたと批判。基本金利の上昇は、レアル高や外国資本流入、輸入増加と輸出の伸び悩みなどの結果も引起こしている。
同報告は、世界各国の基礎的財政収支や負債について分析したもので、ブラジルや中国、インドのように税収が増大した国は支出も増大し、経済の行方を占う上では11月よりも弱体化したと判断。
これら新興諸国の税収増加はコモディティ価格の上昇などに影響されたもので、石油販売などに伴う想定外の増収と高金利による国外資本流入などは、良好な結果のみをもたらすものではないとも警告している。
これに対し、マンテガ財相は、IMF報告書の内容は、近年のブラジルに対する態度と様相を異にしており、休暇明けのIMF理事が伝統的な経済論者がまとめた報告を発表したに違いないと反論。ブラジルは政府支出や基本金利の管理をきちんと行っており、IMFの批判は的外れだというのだ。
これに対し、29日付エスタード紙などは、2010年の政府支出(連邦政府と中銀、国立社会保険院支出の合計)はGDP比19・14%で、15・14%だった2003年より急増と報道。選挙戦を意識した上半期は経済活性化計画(PAC)関連支出が増え、年度途中で経費削減策も発表されたが、年末の政府支出は再度膨らみ、財政支出は年々増加という結果に終っている。
マンテガ財相は、連邦政府の基礎的財政収支はGDPの2・15%の黒字を達成したが、州や市は0・95%の目標を達成出来なかったため、全体の黒字は3・1%に届かず、PAC分の支出を経費から除外しての調整の必要を示唆。ダヴォスで開催中の経済フォーラム出席中の閣僚達は、今年のブラジルは投資を継続するものの国内消費や政府支出は沈静化との見通しを明らかにしているが、ジウマ政権が緊縮財政策導入とインフレ抑制に失敗すれば、2014年の実質金利2〜3%の目標達成は困難になる。