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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年2月2日付け

 アフリカにセラード開発のノウハウを移植する壮大な「プロサバンナ計画」の記者会見を聞きながら、心中はどこか虚ろだった。セラード関係者と話していて「良い経験だった」と単純に言い切れる人に出会ったことがないからだ。大なり小なり辛い記憶がある地、そんな印象が強い▼足を使った取材で定評のあるコロニア史のベストセラー『百年の水流』(06年)の著者外山脩氏に尋ねると「コチア産組が崩壊した理由の3分の1、南伯に至っては100%の原因がセラード開発にあると考えている。あれに踏み出したことでコロニアの歴史が変ってしまった」と一刀両断した▼37年間も中南米の農業開発に技術者として従事した白石健治氏が著した『南米農業開発の回想』(04年)でもコチア、南伯の「どちらも、日伯協力事業であるプロデセールに参加しており、その方面での過剰投資が重荷となって、ついに資金繰りが悪化したといわれる。しかし、経営破綻の原因はひとつやふたつではなく、いくつもの要因があったはずだ」と書いているが、主因の一つであったことは否定していない▼当時勢いの良かった組合員の多くが乗り出し、結果として泣く泣く撤退の憂目に遭ったことは記憶に新しい。JICA研究所の本郷豊客員専門員は「穀物メジャーが〃トンビに油揚げ〃みたいに言われることがあるが、そればかりではない」と再三強調していた。大金を投資した日本政府側としては「失敗だった」とは言われたくないから当然だろう▼アフリカでは零細農の立場を重視し、当地の負の経験も含めて活かして欲しいものだとつくづく思った。(深)