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R$500億の経費削減案発表=最賃R$545と抱き合わせ=高インフレに大統領折れる=PACや福祉関連は保持

ニッケイ新聞 2011年2月11日付け

 インフレ高進に止む気配が見えない事を受け、連邦政府が9日、史上最大規模となる500億レアルの経費削減を行うと発表した。10日付伯字紙によると、ギド・マンテガ財相は、削減額は最低賃金545レアルという条件の下で算定されたもので、最低賃金が上方修正されれば、これ以上の経費削減も必要となると釘を刺したという。

 マンテガ財相とミリアン・ベウキオル企画予算管理相が9日に発表した経費削減案は、国会承認済みの議員立法による支出を中心に予算をカットするもの。インフレ抑制と基礎的財政収支黒字目標達成のためには実行あるのみだが、経済活性化計画(PAC)や社会性福祉政策面での予算は確保するという。
 インフレ高進を避けるための経費削減という政策はルーラ政権最終年にも打ち出されたが、前政権では、税収増加などを背景に支出増が続き、負債を増加させたまま政権交代となっている。
 その意味で、500億レアルというかつて無い規模の経費削減が導入され、予想を上回る税収分は基礎的財政収支の黒字確保に当てるとのマンテガ財相の言葉は、インフレの実態が政府関係者の予想を超えたものである事を示す証拠といえる。
 というのは、経費削減策はジウマ大統領が選挙公約で否定しており、新政権での導入を避けたい性質のものだから。選挙公約で謳われた税制改革も来年以降に持越しの公算が強まっている。
 削減は汚職摘発も続いた議員立法が中心で、認済み予算210億レアル中180億レアルが削減される可能性がある他、来週大統領が署名する予定の法令では、旅行経費半減を明記。新公務員の採用中止なども経費削減策の一つだが、社会経済開発銀行(BNDES)に回す金額削減は、同行から融資を受けた場合の返済金利拡大に繋がり、生産活動減速の怖れもある。市場関係者は、この額ではインフレ抑制効果は期待できても、基礎的財政収支の黒字目標達成は無理と見ている。
 一方、マンテガ財相が強調したのは、この経費削減額は最賃545レアルを前提にしており、最賃額が上がれば別の経費削減が必要となる事。最賃がこの額で承認されれば所得税計算基準の引上げもあり得るという。
 545レアルという額はジウマ大統領もこれ以上交渉の余地なしと宣言していたもので、連立与党は民主労働党(PDT)以外、ほぼ同意。同党の最賃案は、労組が要求する580レアルや民主社会党(PSDB)の600レアルなどよりやや低い560レアルと見られ、来週中に上下院で審議が行われる予定だ。