ニッケイ新聞 2011年2月18日付け
最近テレビでジウマ大統領が左派活動家時代に収監されていたDOPS(政治社会警察)の監獄の映像を見て、日高徳一氏は「あっ! 自分が入っていたところと同じだ」と驚いたという。勝ち負け抗争は日本に深く根を張るコロニアの出来事であると同時に、実はブラジルの歴史の貴重な一部でもあるから、もっともだ。だからこそ今年公開予定の映画『コラソンイス・スージョス』が制作された▼その主人公タカハシは勝ち組に属し、日の丸で汚れた靴を拭いたという警官に抗議する行動に加わり、農業組合の理事長殺害にも関係する役だと聞くので、日高氏をヒントにした物語といえそうだ▼映画の同名原作が刊行された当時、ブラジルのマスコミは臣道聯盟を説明するために「東洋のゲシュタポ」「日本のKKK」というセンセーショナルな言葉を使っていた。記念すべき08年に刊行された『スーペルインテレッサンチ』誌(アブリウ社)の「世界の秘密結社」特集号には「アルカイーダ」やら「KKK」に混じって堂々と「臣道聯盟」が入っていたのを見たときは呆れるを通り越して滑稽だった。南米最大手の出版社から出ても、こうだ▼同映画の中で勝ち組や臣道聯盟がどう扱われるか分らないが、国内外の映画祭を通して大きな影響があるかもしれない。日本でこの逸話が映画化されたことはない。祖国からは半ば忘れられた逸話が、良い意味でも悪い意味でも〃ブラジルの歴史〃として独り歩きを始める瞬間に、我々は立ち合わせている。この映画に関して子や孫から質問された時、貴方はどう説明しますか。(深)