ニッケイ新聞 2011年2月25日付け
上院が23日、最低賃金をめぐる重要法案2件を承認した。24日付伯字紙によると、一つは今年の最賃の545レアルへの引き上げで、もう一つは、2015年までの最賃額は国会審議を経ずに政府が決める事が出来るというものだ。
16日から17日未明にかけての下院審議で承認され、上院でも難なく承認されたのは、ルーラ政権が決めた最賃540レアルを545レアルに引き上げるという案で、下院同様、民主社会党(PSDB)の600レアル案や民主党(DEM)の560レアル案は却下された。
600レアル案は賛成17、反対55、棄権5で否決され、560レアル案は賛成19、反対54、棄権4で否決されたため、545レアル案は大差で承認された事になるが、ジョゼ・サルネイ議長が政府案については形だけの表決を行い、社会大衆党(PPS)のイタマル・フランコ元大統領が「少数派への敬意を欠く」と苦言を呈する場面もあったようだ。
もう一つの、15年までの最賃額決定は国会審議不要とする案も、賛成54、反対20で可決されており、現政権の連立与党勢力は磐石だ。
というのは、23日の審議の場合、出席した連立与党12党所属議員61人中、反対または棄権は7人で、野党4党の18人がどうあがいても政府側が有利で、与党が一致さえすれば、憲法改正さえ可能な状態だ。
ルーラ政権時代の2007年、いわゆる小切手税(CPMF)の継続審議での賛成者は45人。ルーラ政権では常に反対票を投じた労働者党(PT)のパウロ・パリン上議は、1最賃を上回る年金受給者への調整をインフレ以上とする事などを条件に、賛成に回ったという。
上下両院で承認された最賃額は大統領裁可後の3月から適用されるが、最低額の年金受給者への適用は4月分から。
一方、最賃審議終了で表面化し始めるのは、ミシェル・テメル副大統領やサルネイ議長所属の民主運動党(PMDB)関係者への役職配分交渉と、最高裁判事らの給与引き上げ交渉だ。
判事給交渉は実質賃金の引き上げではなくインフレによる購買力喪失分を補うだけというが、500億レアルの経費削減を試みる政府にとり、新たな出費増は頭痛の種。23日付フォーリャ紙には、64%の経費削減を要求されたスポーツ省もサッカーW杯とリオ五輪向け経費は確保の記事など、どこの何を削るかの判断は難しい。経済活性化計画(PAC)や持ち家支援のミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ計画も削減対象から外したい現政権にとり、節約か計画延期や取り止めかの選択作業が続いている。