ニッケイ新聞 2011年2月26日付け
法務省が24日に発表した統計によると、1998年から2008年の10年間で、南東伯の殺人事件被害者数は減ったものの、その他の地域では北東伯の73・8%を筆頭に被害者が増えていると25日付エスタード紙が報じた。
98年と08年との比較で殺人事件の被害者が150%以上増えた地域は南伯と北東伯に集中している。南伯はパラナ州とサンタカタリーナ州をまたぐ辺りを中心とした被害者急増だが、北東伯ではペルナンブコ州レシフェ周辺を除く全域で被害者が急増している。
殺人事件の被害者が10年間で増えた上位5州は、マラニョンの297%を筆頭に、バイア237・5%、パラー193・8%、アラゴアス177・2%、セルジッピ174・8%。被害者が減った方の上位5州は、サンパウロ州の62・4%以下、ロライマ49・8%、リオ38・6%、ロンドニア16・1%、ペルナンブコ13・8%だ。
被害者急増の5州はパラー以外みな北東伯で、エスタード紙は、貧困で悩んでいた地域に治安回復という課題が加わったと表現している。
世界50カ国を比較した殺人事件発生率調査で3位に位置した事もあるブラジルが6位に下がったのは、サンパウロ州やリオ州の被害者が67・5%と29・8%の様に大きく減少した事などを反映したもので、サンパウロ州では、10万人当たりの被害者も全伯5位の39・7人から25位の14・9人に低下。
一方、98年は人口10万人当たりの殺人被害者が欧州並みの5人だったのに、08年は19・7人に増え27位から21位に上がったマラニョン州や、9・7人の22位から32・9人の8位に浮上したバイア州などは懸念材料。98年は21・8人で11位のアラゴアス州が08年には60・3人で1位、13・3人で19位だったパラー州が39・2人で4位というのも目立つ。
調査を取りまとめたジュリオ・ジャコボ・ワイセルフィッツ氏は、北東伯や北伯の一部での殺人増加は、地域開発が進み経済力がついてきた事で、雇用増や所得増と共に人口も増えたのに、州政府などの対応が遅れ、治安が確保できなくなった結果と指摘。
アラゴアス州では、地域住民から通行料まで徴収する麻薬密売者に文句をいう人を殺す緘口令的殺人や、払えないなら命で払え式の殺人も横行。15〜24歳の青年10万人当たりの被害者は、98年の30・6人から125・3人に増え州平均の倍以上というのも、犯罪がらみの殺人が多い事の反映だ。
バイア州ではリオ州同様、軍警の平和駐留部隊(UPP)導入を検討。アラゴアス州でも地域密着型の警察組織導入を計画し、治安回復に努める意向を表明している。