ニッケイ新聞 2011年3月5日付け
3日の地理統計院(IBGE)発表によると、ブラジル経済は2010年に7・5%という高成長を遂げ、国内総生産(GDP)を世界7位に押上げたと4日付伯字紙が報じた。1986年以来の高率となる7・5%の成長は国別成長率でも3位に入り、国際通貨基金(IMF)専務理事が減速を薦める状況だという。
2009年の経済成長率がマイナス0・6%に止まったため、昨年の経済は当然高率成長と予想されていたが、7・5%という成長率は、中国の10・3%、インドの8・6%に次ぐ高率で、GDP総額は3兆6750億レアル(2兆890億ドル)となった。
最終的な判断は4月のIMF報告を待つ必要があるが、2兆890億ドルというGDP総額は、イタリアの推定GDP2兆370億ドルを超えると見られ、ブラジルのドル換算のGDP世界ランキングは8位から7位に上昇した事になる。
昨年の成長率7・5%という数字は、国際的な金融危機でマイナス成長に止まった2009年との比較である事も影響しており、ジウマ大統領も「順当な数字」と評価。ただ、このような高率の経済成長を続けることは困難で、今後数年の経済成長率は4・5〜5%程度と見られている。
ブラジルの場合、国際的な金融危機下でも国内消費が落ち込まず、経済の回復を助けたが、2010年の経済成長も、国内消費拡大が10・3%の国内需要拡大を招き、経済成長を後押している。
分野別の年間成長率で目立つのは、財やサービス輸入36・2%、投資21・8%、建築11・6%、財やサービス輸出11・5%など。レアル高と輸入増加で力をそがれたはずの工業は10・1%成長。コモディティ高騰で期待された農牧畜業と雇用創出で群を抜くサービス業は経済成長率を下回る6・5%、5・4%の成長だった。
一方、消費過熱や経済高成長に伴う懸念はインフレで、市場では、経済成長率を4%程度に抑えなければ、年間インフレを4・5%に抑える事は不可能との声もある。
そういう意味で、政府関連支出の抑制や政策基本金利の引上げは重要な要因の一つだが、国民所得や購買力の向上は、社会格差是正という意味でも必要な部分。一般家庭の消費熱が収まるには時間がかかり、昨年後半から始まったとされる経済の減速は、予想されるほど早くは進まないと見る向きもあるようだ。
3日にジウマ大統領との初会談を行ったドミニク・ストロス・カーンIMF専務理事は、貧困者救済策を賞賛すると共に、経済の超過熱化回避のための減速を勧め、政府や中銀のインフレ抑制策を歓迎したという。