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人の手が自然災害を増幅=リオ山間部被災地でも=開発禁止区域に被害集中=環境保護法の改悪阻止を

ニッケイ新聞 2011年3月8日付け

 イザベラ・テイシェイラ環境相が2日、1月に起きたリオ州山間部での土砂災害があれほど大きくなったのは、環境保護法(Codigo Florestal)違反と密接な関係ありと報告し、環境保護法見直し論が再燃しそうだ。

 環境保護法は川岸や水源地周辺の原生林保護や山の斜面・丘の頂上などの開発規制などを盛り込んだ法律。リオ州山間部の被災地では、丘の頂上や山の斜面、川沿いなどの開発禁止区域(APP)を中心に大きな被害が出た事を示す写真を環境相が提示したと4日付フォーリャ紙が報じた。
 同紙掲載の写真は、被災前後のテレゾポリスとペトロポリスの航空写真にAPPの範囲を示す点線を付したもので、濁流や土石流の被害がAPP中心に発生した事が一目瞭然だ。
 一方、昨年下院で承認済みのブラジル共産党アウド・レベロ下議提出の環境保護法改定案は上院審議を残すのみだが、900人以上の死者を出した惨事を機に環境省が法案見直しとの報道は1月20日付フォーリャ紙などが取り上げていた。
 従来の環境保護法は、丘の頂上や傾斜が45度以上の山の斜面、川が氾濫すれば被害が出る可能性を有する地域(川幅10メートル以下なら岸から最低30メートル、幅5メートル以下は15メートル)の範囲などをAPPとし、家屋建設なども禁じているが、レベロ案では、幅10メートル以下の川は15メートルの様に、APP域を半減。傾斜が45度以上の斜面や丘の頂上にも家屋建設などを認めている。
 2月10日付フォーリャ紙によれば、環境省改定案では、幅5メートル以下の川岸は従来通り15メートルまで開発禁止だが、家族規模の農業向け開発は容認など、既に開発した区域の扱いに柔軟性を持たせている一方、08年7月22日以前の森林伐採は罰しないというレベロ案に対し、不法伐採者への懲罰免除は排除している。
 その他にも、APP以外の土地の不正開発合法化のため、アマゾンでは所有地の80%、セラードでは35%、それ以外の地域では20%とされている自然保護区域を、アマゾンでは50%まで無条件縮小のレベロ案に対し、環境省案は01年6月以前の開発地域の50%まで縮小と、自治体面積の半分が開発されずに残っている場合の開発は30%まで許可など、急激な開発容認回避の方針が表れている。
 2日付エスタード紙は伐採地に再植林して水源が生き返った例などを紹介。マリーナ・シウヴァ元環境相も環境保護法改正を阻止するよう呼びかけ続けており、既開発地域は既存権として利用を認めるのと、一度損ねた自然を回復させて増収や災害防止を図るのとどちらが正しいかなどを再考の上の国会審議が待たれている。