ニッケイ新聞 2011年3月17日付け
11日に起きた東日本大震災は、15日にもマグニチュード6など、強い余震が続いているが、現在最も懸念されているのは、福島第1原発での爆発などに伴う放射線漏れ。フランスの専門家が米国スリーマイル島の事故を上回る危険度6と判断するに至っても、日本側の評価は危険度4のままなど、国際社会の対応と日本政府や関係者の対応に大きな温度差がある事が浮き上がっている。
日本史上最大の東日本大震災は、マグニチュード8・9から9・0に修正された時点で世界4位の震災となったが、世界中が今回の震災に注目する主な理由は、日本が17カ所55基の原子炉により国内消費電力の30%を賄う原発依存国であり、世界3位の経済大国である事だ。
地球温暖化が進む中、クリーンエネルギーである原子力発電は先進国を中心に拡大していたが、福島第1原発での事故発生後は、世界各国で原発見直しを叫ぶ声が広がっている事は16日付本紙でも少し触れた。
その一方、福島第1原発1号機の原子炉格納容器を覆う建屋(たてや)の爆発事故後も、健康には被害なしとし、周辺での放射能濃度が高まっている事や爆発事故の詳細を報道しない政府の対応には苦情も出ていた。
その後も、3号機建屋爆発や2号機の原子炉格納容器損傷と爆発、停止中の4号機の火災、5号機原子炉の水位低下などは各国メディアも報道しているが、気になるのは日本と他国の温度差だ。
原発から250キロ離れた東京でも高濃度の放射性物質が検出され、食料備蓄などに走る人で都心のスーパーが空っぽになった事や国内外への脱出を試みる人で成田空港や羽田空港、JRの駅が大混雑する様子は16日付伯字紙が「東京が空っぽに」と報道。
原発事故の危険度は6との情報がブラジルで流れた15日も日本の評価は危険度4のままで、13日に現場に入ったフリージャーナリストが放射線濃度を測ろうとしたら針が振り切れたのに、危険を知らされてない住民は平気で戸外を歩くなど、不安を煽らぬ配慮という言葉だけでは説明できない対応が日本。
日本政府が国際原子力機関や米国に支援を頼んだ14日の時点でも国民はその重大さを知らされてなかった様だが、BBCなどは12日から原発事故の深刻さを訴え、ブラジルメディアも同日来「核の懸念の只中で」と報じ続けた。その意味で、13日付伯字紙が「定期点検などもおろそかで過去に数度事故を起こした」と記載した東電の対応が遅れ、初歩的なミスを起こした事も予見できたといえそうだが、事実をぼやかし、「落ち着いた対応」を求める事に終始した菅政権の対応には批判が高まっている。
また、世界3位の経済大国が麻痺した事で、自動車、電気電子機器関係企業での部品供給不足など、ブラジルも含む世界大の影響が懸念されており、被害額は日本国外の方が大きくなると予想する声さえ出ているようだ。