ニッケイ新聞 2011年3月25日付け
最高裁判所が23日、2010年の統一選はフィッシャ・リンパ法の適用外とする事を決めたと24日付伯字紙が報じた。これにより、選挙高等裁判所などで出馬資格なしまたは当選無効と判断された候補の中からも当選者が出る一方、既に就任していたのに落選となる議員達も出て来る。
2010年10月の統一選にもフィッシャ・リンパ法が適用されるか否かは憲法解釈の問題でもあり、昨年中に行われた最高裁審理では2回とも5対5で結論が出ないまま、統一選の当否判定が行われるという、異例の事態が生じていた。
フィッシャ・リンパ法は、汚職や選挙法違反、環境破壊などで断罪された政治家や被選挙権を失わないよう辞任した政治家の選挙出馬を制限し、政界浄化を狙う法規で、刑期終了後または任期を全うしたと仮定した年から数えて8年は出馬資格を認めないなどの条件が定められている。
この法規は、国会承認後の大統領裁可が出たのが昨年6月4日。選挙高裁が10月の統一選から適用と決めたのが6月10日で、裁可前に断罪、罷免、辞任の政治家にも適用を決めたのが同17日だったため、立候補したものの、資格剥奪などの対象となった候補者が200人余り出た。
同法適用の対象とされた候補者の中には、選挙高裁の判断を不服とし、最高裁まで控訴した例が30数件ある。出馬資格審査に手間取る間に投票日を迎え、当選に足るだけの票を獲得した候補も51人いたという。
最高裁まで控訴した例については、元連邦直轄区知事で知事選に再出馬したジョアキン・ロリス氏ら2件の審理が行われたが、8月に定年退職した判事がいたため、総勢10人となった判事の見方が二分し、結論が出ない状態が続いた。
これに対し、今回の最高裁では、3月に就任したルイス・フックス判事が、選挙関連法は選挙の1年前に施行という規定を遵守すべきで昨年の統一選への適用は不適切とした事で、出馬資格剥奪といわれながら当選に足るだけの票を獲得した議員は当選扱いとされる事が決まった。
この処置で上議当選となるのは、民主社会党のカシオ・クーニャ・リーマ氏や社会党のジョアン・カピベリベ氏ら。下議には社会党のジャネッテ・カピベリベ氏らの名前が挙げられている。
今回の判決は、大統領裁可前に罪を犯した政治家への適用可否など、今後も審議を重ねる項目を残しており、来年の選挙でも混乱をきたす可能性がある上、160万人以上の署名を集めた諸団体や国民の声を無視した判決に不満が出る事は必至。サルネイ上院議長は24日、国会は最高裁の判決に従うとの見解を表明したが、憲法に規定された施行時期優先か、フックス判事も賞賛した道徳性優先かの憲法理解の差が、複数議員の当否を覆す事となった。