ニッケイ新聞 2011年3月26日付け
スザノ市の福博村が今月11日に入植80周年を迎え、13日に慰霊法要と敬老会が同村会会館で行われた。戦前から独自の村づくりを目指し、都市化の波、近年では治安の悪化などの困難を乗り越えながら迎えた節目の年。当日は約130人が訪れ、故郷を築いた先人たちを偲び、感謝の思いを捧げた。今年は様々な記念事業を計画しており、10月2日には記念祝賀会を開催する予定だ。
1931年3月11日、原田敬太、古賀貞敏・茂敏兄弟の入植により第一歩を踏み出した福博村。文化活動や陸上・剣道などのスポーツ活動に力を注ぎ、戦後は養鶏でも知られた。村レベルの実態調査も定期的に行い、日本からの研究者訪問も多い。
その一方、都市化の浸透、出稼ぎなどによる人口流出と高齢化、さらにここ数年は治安の悪化などに悩んでいた。村周囲の不法占拠者の住居が昨年末に撤去されてから治安は改善しつつあるが、貯水湖建設のため市中心部から村を通る旧街道が通行止めになるなど新たな問題も出てきている。
法要に先立ち上野ジョルジ村会長は、「80周年を皆様とお祝いできるのは、ひとえに先輩諸氏の尽力のたまもの」と感謝。困難の中ではあるが、10月の祝賀会に向けた記念行事・事業への協力を呼びかけた。
75周年以降に亡くなった29人の名前が読み上げられ、老人会福栄会の斉藤武衛さん、婦人会の寺尾芳子さんが追悼の辞を述べた。斉藤さんは「我々が現在福博という理想郷で文化生活を送れるのは、苦楽を共に歩んだ今は亡き友のおかげ」と感謝の思いを表した。続いて東本願寺川上寛祐師、真言宗菅野信隆師の読経の中出席者が焼香した。
法話で東日本大震災の犠牲者に哀悼の意を表した川上師は、報道で賞賛される被災者の礼儀正しさを「先祖から伝わった一番素晴らしい日本人の徳」と称え、先人が残したものを子孫へ伝えることの大切さを語った。
遺族代表の石橋ジュリオさんは、「亡き先駆者の霊も心から喜んでいるだろう。村づくりは90年、100年と続く。大変だろうがこうした催しをずっと続けてこの村を盛り上げていってほしい」と話した。
法要後は75歳以上の高齢者67人に記念品を贈呈。代表して杉本正さん(94)は「共に成長し、度重なる波を乗り越えてきた歳月に思いをはせ、私達は幸せだと思う。微力ながら、これからも喜んで手伝いたい」と謝辞を述べた。
この日は慰霊法要ということで、大浦文雄村会顧問が乾杯でなく「献杯」の発声。昼食後は福博太鼓や歌手伊藤カレンのショー、日本舞踊などを楽しみながら午後のひと時を過ごした。
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村では80周年記念事業として会館増築や実態調査、75周年以降の催しを記録したDVD制作などを計画している。
会館の増築は、会館横の駐車場部分170平方メートルを使って拡張するもの。予算は約4万レアルで、近く工事を始める予定だ。70周年の際も村会長を務めた上野氏は、「反対の意見もあったが、このまま村をさびれさせてはいけない。何か残していきたいと思い提案した」と語る。
運動会やカラオケ大会、剣道大会などの年中行事に加え、今年はやきそば会やすきやき会などを通じて資金集めを行うという。上野会長は「10月の祝賀会には、村を出た人、多くの来賓を招待して盛大に催したい」と抱負を語った。