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ラーメンで復興への活力を=福島県=二世のチバさんらが炊き出し=被災者の心と身体温める

ニッケイ新聞 2011年4月1日付け

 【群馬県太田市発=池田泰久通信員】東日本大地震の被災者を励まそうと、日本のサッカー場でブラジル料理を屋台販売している日系ブラジル二世のチバ・ジルベルト・カズオさん(49、リオ市出身、神奈川県川崎市在住)が3月26、27の両日、放射能事故を起こした福島第一原発から30キロ圏の屋内退避地域にある福島県南相馬市の避難所2カ所を訪れ、被災者にラーメンを無料でふるまった。子供からお年寄りまで約350人が熱々の特製ラーメンで疲れた体を温め、復興への活力を取り戻した。

 ラーメンは、もやしとウインナー、ひき肉が入った本格的なみそ味。チバさんによると、同地の被災者にはそれまで十分な食料支援がなく、温かい食べ物を待ち望んでいた人が多かったという。チバさんは、被災者にさらに元気になってもらおうと、24本入りのガラナジュース18箱も届けた。
 関東一円にラーメンチェーン店を展開する株式会社「トライ」の田所史之社長(千葉市)ら日本人二人が同行し、食材や調理用のガスなどを全面的に支援した。スープ用の水はチバさんの調理兼販売用のワゴン車と田所さんの車で約350リットルを持ち込み、3人で協力して調理にあたったという。
 南相馬市出身で、福島原発の復旧作業にあたっている田所さんの知人からの依頼をもとに、約7時間かけて避難所の公立学校に駆け付けた。「ぜひ自分たちも協力したい」と、同地までのガソリン代として、神奈川県横浜市鶴見区に暮らす日系ブラジル人からのカンパ金をもらい、自家発電機も借り受けたという。
 10代後半の二人の子どものためにと、地震発生後、ブラジルへの帰国を考えていたというチバさん。在日ブラジル人の中には帰国した人も少なくないという。しかし、テレビや日本人の知り合いなどからしっかりと情報を集めていく中で、日本で暮らしても大丈夫だと分かり、被災者の力になりたいと思うようになったという。
 チバさんは「ラーメンを食べてくれた人たちが笑顔で美味しい、美味しいと喜んでくれて自分もうれしくなった」と振り返る。チバさんのほかにも、被災地の支援を行おうとしている日系人も多いという。また、田所さんによると、避難勧告が出ている影響で同市には人気が少なく、多くの家々が津波に流されていて「ゴーストタウンさながらだった」という。