ニッケイ新聞 2011年4月14日付け
【既報関連】11日から中国滞在中のジウマ大統領が12日、中国の胡錦濤国家主席と共に、29項目にわたる合意書に署名したと12日、13日付ブラジルメディアが報じた。経済、貿易関係に限らず、多岐にわたる合意の成立は、互恵主義を大前提にしたもので、ジウマ政権にとっては明るい材料となりそうだ。
国内総生産は世界2位で、国際的な影響力もブラジルの比ではない中国に対し、従来以上に強い姿勢で臨んだジウマ大統領にとり、コモディティ関連分野の他、ハイテク部門も含む多分野での合意成立は、両国関係の強化と共に、ブラジルの国際的な影響力伸張にも大きな期待を呼んでいる。
3月のオバマ米大統領来訪の時も対等な立場での話合いを望んだジウマ政権は、訪中でも、両国関係の多角化を目指し、従来以上に強い態度で交渉に臨んだとの評価は、BBCの取材に応じた、米国スタンフォード大学教授で、現在は台湾で客員教授を務めているエリケ・ヴァンデン・ブッシェ氏の言葉だ。
従来は、鉄鉱石や大豆などのコモディティを輸出し、ハイテク製品などを輸入するという貿易関係が主であったブラジルにとり、エンブラエル社のE190型航空機25機で14億ドルの商談成立やバイア州での大豆加工工場建設に3億ドルなど、農業や社会、観光、教育に、エネルギー、スポーツなどの多分野での合意を得て、ハイテク部門での大型商談も取り交わされたのは大きな収穫だ。
アジェンシア・ブラジルによれば、12日に調印された合意内容は、14年のサッカーW杯や16年のリオ五輪も見据えた投資なども含む29項目に及ぶという。
一方、ジウマ大統領が強く願っていたハイテク部門では、サンパウロ州オルトランジアのZTE工場建設に2億5千万ドル、同カンピーナスのファーウェイ(華為技術)研究センター建設に3億5千万ドルの投資が決まった。
だが、それ以上に注目を集めたのは、台湾に本社を持つ電子機器受託生産企業最大手で、フォックスコンの商標で知られる鴻海精密工業(ホン・ハイ・プレシジョン・インダストリー)が、120億ドル(190億レアル)を投じ、コンピューターやタブレットと呼ばれる小型電子機器用のパネル製造工場建設の話。
ブラジルが年30億ドルをかけて輸入している品を国内生産し、10万人の雇用創出が可能で人口40万人の頭脳都市建設なども想定という。この話が本当になれば、それでなくても熟練工不足のブラジルへの外国人労働者流入は避けられない。
国連安保理の常任理事国入りも応援するという中国だが、一方では、中国の姿勢は変わっていないとの報道も流れている中、中国企業がなだれ込み、中国本土を潤す一方で、現地には恩恵なしといわれたアフリカの轍を踏まぬようにとの警告の声も聞こえている。